CO2半減へ157の取り組み 地域全体でスクラムを 「環境モデル都市」の北九州市
2008/08/04
ニュース
政府から「環境モデル都市」の認定を受けた北九州市が計画する地球温暖化対策の取り組みは157に上る。
2050年の市内の二酸化炭素(CO2)排出量を05年度の半分まで削減、アジア地域でも削減を支援する。公害を克服し、「世界の環境首都を目指す」と宣言して4年。市民と企業、行政がこれまで以上に連携を深め、実効性のある行動を進められるかどうかが成否の鍵を握る。 (北九州支社・渡辺晋作)
■日本の先頭に
「日本の先頭に立ってほしい」
7月29日午後、首相官邸。福田康夫首相は環境モデル都市の認定式で、北橋健治市長にこう言葉を掛けた。
北九州市の計画には3本の柱がある。「次世代エネルギー供給システム」では、工場の廃熱や副産物の水素を他施設で再利用。太陽光発電も積極導入する。
「二百年街区」は、耐久年数の長い住宅建設、車に頼らず歩いて暮らせる街づくりが目的。環境技術や人材育成のノウハウをアジアへ移転する拠点「アジア低炭素化センター」も整備する。いずれも5年以内に具体化に向けて動きだす。
重化学工場が立ち並ぶ市内では、温室効果ガス排出総量の7割近くを産業部門が占める。国としても全体で4割近い同部門の削減が課題。「産業都市北九州だからこそ取り組む意義がある」。市幹部は強調する。
■燃費10%向上
既にスタートした事業もある。
7月に始まった「北九州エコドラプロジェクト」。市の呼び掛けに応じた八幡東区のタクシー、運送など7社が、急発進、急ブレーキを控える「エコドライブ」を実施。「CO2対策」をもじった「塩津大作(しおつたいさく)」というキャラクターのステッカーを業務車に張ってアピールしている。
実行委員長の石橋孝三さんが社長を務める「光タクシー」の目標は「燃費を前年度比10%向上」。本番前の4月から、運転手に燃費の日報記入を義務づけ、点呼時に「客待ちのときはできるだけエアコンを切ろう」などと確認し合う。6月は12%改善に成功した。
石橋さんは「環境への意識次第で変わることを実感できた。意識を持続させ、運動を広められるかが課題」と語る。
■真価問われる
高度成長期、北九州市の洞海湾は大腸菌もすめないほど汚れ、沿岸のばい煙で洗濯物を外に干せなかった。主婦たちは「青空がほしい」と立ち上がり、20年以上かけた運動の末、市と県は企業と公害防止協定を締結。洞海湾はよみがえり、青空を取り戻した。
今では「エコタウン」に環境関連企業が集積し、市は中国へ環境技術を移転する国際協力を進める。こうした取り組みの結果、環境関連の非政府組織(NGO)による「環境首都コンテスト」で2年連続日本一になるなど、環境首都への道を着実に歩んでいる。
それでも、一部市民がごみの分別ルールを守らず、産廃の不法投棄もなくならないなど環境モデル都市らしからぬ側面があるのも事実。北橋市長は「取り組みの主役は市民。市民の気持ちが一つになることが何よりも重要」と強調する。
かつて公害を乗り越えたように、地域全体がスクラムを組んで地球規模の難題に対処できるか。「環境首都」の真価が問われる。
出典:西日本新聞朝刊