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松下液晶、排水ゼロ工場(パネルベイ)

2008/07/10

ニュース

松下電器産業は十四日、兵庫県姫路市臨海部で液晶工場の起工式を行う。液晶に本格参入するため約三千億円を投じる戦略拠点だ。土ぼこりを上げて工事車両が行き交い、クレーンも到着。準備工事が始まった。

「工事ピーク時には一日に延べ一万人が作業し、約四千台の工事車両が通行する。生コンクリートなどは海上輸送して近隣に迷惑が掛からないようにしたい」。松下や竹中工務店などは六月中旬までに、建設予定地周辺の住民に計五回の事業説明会を開催した。

担当者は工場の事業概要だけでなく、建設に伴うきめ細かな情報を提示しながら地域環境への配慮をにじませたという。工事関係者も新工場を省資源、リサイクル、景観に配慮した「最先端工場にしたい」と意気込む。

説明会に参加した白浜地区連合自治会の浜田長伸会長は「工場と共存共栄していきたい。着工後も随時情報交換しながら、地域への負担が掛からぬよう配慮してもらいたい」と指摘した。

松下は新工場に世界最先端の環境対策技術を導入する。工場からの排水量をゼロに抑え、年間約六千六百トンの二酸化炭素(CO2)を減らす。例えば洗浄、現像、必要ない金属膜を除去するエッチングなどのパネル製造工程で使う水の必要量を詳細に分析。排水リサイクル処理設備を設け工場全体の水回収率一〇〇%を目指すという。

液晶パネルを年間千五百万枚生産する場合、新工場を運営する傘下のIPSアルファテクノロジ(千葉県茂原市)の既存工場に比べ一日に使う水の量を三五%減の約四万八千トンにする。このうち約半分が製造過程で蒸発し不足分は工業用水で賄う。さらに冷凍機やコンプレッサーなどの廃熱利用を進めてCO2排出量を二割強減らす効果も同時に見込める。

新技術を導入する狙いについて薄型デバイス生産戦略センターの白井正明所長は「工業用水コストを削減でき、初期投資や維持費用も圧縮できる」と効果を指摘する。製造コストを根本から見直す上で、水も無駄にできない資源である。

姫路市はかつて公害問題に直面した経験を資源循環システムの実用化に生かす。市は二〇〇三年、新日本製鉄の広畑製鉄所周辺の約六百ヘクタールを「環境・リサイクル経済特区」として申請、構造改革特区第一号として認定された。同製鉄所では現在、一年間に全国で発生する廃タイヤの約一〇%に当たる十二万トンを製鉄の原材料や燃料などに再利用している。

液晶工場を受け入れる地域の動きも活発化してきた。関西でビジネスホテルを展開する京都プラザホテルズ(京都市)はビジネス客を期待し市内にホテルを建設する方針。清水幸雄社長は「大駐車場を備え利便性を高めたい」と言う。

姫路商工会議所には既に六月三十日までに新工場との取引希望が七十六件寄せられた。窓口の姫路ものづくり支援センターの杉本護ディレクターは「工場の配管・設備、弁当など幅広い業種からの要望がある」と話す。これらの企業情報を工場側へ提出していく。

市も職員三人で暫定的に設置した企業立地推進室を四月に課へ昇格。七月の人事異動で五人体制にした。尾崎治男課長は「建築指導や消防などできる限り手続きを円滑に進める」と、関係者の調整に明け暮れる。

プラズマに加え液晶も手中に収める松下。新工場は地域の多くの人々の期待を乗せて一〇年一月の稼働を目指す。

出典:日本経済新聞地方経済面 (近畿B), 10ページ

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