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ヒューエンス(汚水浄化プラント開発)、特許技術で安さ実現(駆ける企業強さを探る)

2008/05/21

ニュース

今年七月、千葉県内の大手しょうゆメーカーの工場で、一日三千トンの処理能力を持つ大型排水処理プラントが稼働する。業界大手を含む計五社の競争に勝ち、受注したのは帯広市に本社を置くヒューエンス(設楽守良社長)だ。

設立十年目だが特許技術を生かした低コストで高性能の排水・脱臭処理プラントが強み。これまでに三十七カ所に販売。道外販売の強化で受注を伸ばし、二〇〇八年八月期の売上高は前期比約六割増の七億円を見込む。

設楽社長は四十六歳。東北大学農学部を卒業後、廃棄物処理企業に就職。転機は一九九八年、十勝管内の酪農関係者から寄せられた「搾乳施設から出る排水を安く処理できないか」という相談だった。

生乳のパイプラインを洗浄すると乳脂肪分や殺菌剤が混ざった廃液が出る。排水基準内であれば地面に捨てることが多いが、「いずれ環境問題になる」との声が上がっていた。

油分や殺菌剤などを含む排水の処理は主に微生物とオゾンを使う方法に分かれる。微生物処理では、pH(水素イオン濃度)や温度を保つ必要があるうえ、濁りを除く脱色は難しかった。一方、オゾンは有機物を酸化し、低温でも分解能力が安定する。脱色・脱臭にも優れ、処理後の汚泥もほとんど出ない。

設楽社長は帯広畜産大とオゾンを使った処理方法を共同で研究。酪農の排水処理にオゾンを使う例はなかったが、微生物処理より優れているとみて、九九年四月にヒューエンスを設立した。ただ、「オゾン発生装置は高価なのが課題だった」(設楽社長)。

低コスト化を実現したのは、北海道大工学部の井口学教授が特許を持つ「旋回噴流式撹拌(かくはん)技術」の活用。オゾンを高速でかき回すと、分解能力が従来より六―七倍高まった。少ないオゾンで処理でき、プラントの小型化と価格引き下げにつながるとして、この応用技術でも共同で特許申請中だ。

道内の酪農施設や食品加工メーカー向けに実績を積み、日本原子力研究開発機構からの受注にこぎつけた。〇七年三月には同機構の岐阜県の施設で、旋回噴流式のフッ素除去装置が稼働。福井県の施設にも同年八月、地下水を浄化するための排水処理プラントを設置した。

評価の一因が細やかな保守体制だ。遠隔管理システムでプラントを二十四時間三百六十五日監視する。トラブルがあると自動で技術者の携帯電話に警報が届き、異常の内容も把握。速やかに修理できるという。設楽社長は「環境浄化システムは、販売した後の品質保証が重要」と話す。

道外販売を強化するため昨年十二月には日立ビルシステムと提携。同社のエレベーター遠隔監視・制御システムとプラントを結び、電気系統などの故障した場合は、日立ビルが全国三百五十カ所の拠点に配置する約三千人の技術スタッフが対応する。専門的なトラブルのみヒューエンスの技術者を派遣することで管理コストの削減も見込む。

井口教授と共同で、二年後には新規事業として「バイオガスプラント」の実用化を目指す。家畜のふん尿から純度の高いメタンガスを発生させ、ボイラー発電に利用する計画。現時点ではガス精製に一カ月弱を要するが、旋回噴流技術を生かし大幅に短縮する。

オゾンによる排水・脱臭処理に加え、地球温暖化に対応した次世代エネルギーのバイオ燃料プラントを軌道に乗せ、環境ビジネスで飛躍を狙う。

矢野経済研究所によると、二〇〇六年度の民需の環境ビジネス市場規模は約一兆八千五百億円。前年度より一五・八%増え、一〇年度には二兆六千億円に達する見込みだ。ただ、排水処理設備に限れば、市場規模は〇六年度が約千百億円と小さいのに対し、参入企業は五十社を超す。生き残りには技術面などで独自性が求められる。

燃え殻から土木資材を製造し販売する大栄環境株式会社

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