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アディダス 環境問題への取り組み「海洋廃棄物からアパレル製品を作る」

2020/06/29

ニュース

「デジタル化」や「サステイナビリティ」といった変革が進むなかで、アパレル業界の現状と未来、そして日本の課題に深く切り込んだ『2030年アパレルの未来 日本企業が半分になる日』を上梓したコンサルタントの福田稔氏が、俳優業、監督業とともに、「リバースプロジェクト」の代表として長年草の根からの環境問題・社会問題を軸とした活動を続けてきた俳優・伊勢谷友介氏と対談が実施された。

「アパレル業界のトップコンサルタント」として活躍する福田氏と、「環境負荷の少ないアパレル製品などをプロデュース」している伊勢谷氏の両氏が、お互いの活動を通して見えてくる「サステイナブルなアパレル事業」について語りました。

<欧米に比べて「環境意識」が低い日本>
福田:日本はアパレル市場が大きくて、アパレルの会社はたくさんあるんですけれども、「環境問題」については、やはり海外アパレル企業のほうが進んでいます。「なんとか日本も変えていきたい」というのが、私の思いとしてすごくあります。

伊勢谷:福田さんのご著書『2030年アパレルの未来 日本企業が半分になる日』を拝読して、日本の遅々としたアパレル産業の構造を強烈に実感しました。海外ではサステイナブルを実現しながら、経営もうまくいっているという会社もあると聞きます。

福田:例えば、アメリカの「リフォーメーション(Reformation)」は、自分たちの生産体制で、「CO2の排出量」「水の使用量」「ゴミの排出量」などを消費者に公開しています。
アメリカは消費者意識が高いので、こういった会社に多くのファンがつく。
「リフォーメーション」は、創業5年くらいで売り上げが数十億円後半まで急成長し、昨年欧州のプライベートエクイティーファンドの「ペルミラ」に高値で買収されました。

伊勢谷:日本と比べると、やはり欧米は環境意識が高いですよね。
誰もが知っている企業でいえば、「アディダス」が、「海洋プラスチック廃棄物」を原料とした素材でスニーカーやスポーツウェアをつくる取り組みをグローバルで行っています。すでに世界の海洋に投棄されたプラスチック廃棄物を1400トン以上回収し、それをアップサイクルすることで数百億円の事業にしているんです。

<アディダスは「廃棄物」を「大きな事業」へ>
【重要な点-1】環境活動をしっかりお金に変える
福田:重要なのは、環境活動をしっかり「お金にしている」ことです。

伊勢谷:数百億円規模の事業になるところまでいくのが重要ですね。そこに投資できるパワーというか、社会的作用が本国(ドイツ)にあるんでしょうね。

福田:海外では、SDGsを「事業機会」としてとらえているんです。アディダスの例でいえば、海洋プラスチックを回収して終わりではなく、製品にしてそれを数百億の事業にしている。ここまでやり切るのがすごいですよね。

伊勢谷:日本だと、巨額の投資をして事業化しようというより、植林などのアピールだけでお茶を濁してしまうところがある。しかも、植林をするにも最終的なエフェクトまでは考えない。人工林は手を入れることも必要ですからね。単に「植えればいい」んじゃない。

【重要な点-2】そこまでの投資ができる経営者がいる
福田:そのとおりだと思います。アディダスのように、そこまでの投資ができる経営者がいるのが日本との違いです。海洋プラスチック廃棄物をスニーカーの素材に変えるなんて、簡単なことじゃありません。研究開発投資だけでも、莫大な先行投資をしているはずです。強い意思決定ができる経営者がいるから、従業員の意識も変わっていくんでしょうね。

伊勢谷:「環境問題をビジネスすること」に苦戦してきた僕らとしては、海外の成功事例はわくわくする話です。CSRではなくて、消費者が求める魅力的な商品をつくっているわけですから。しかもそれが、企業全体、従業員や消費者、ひいては社会を引っ張っている原動力になっているんですね。

福田:「環境負荷」の少ない商品を消費者に選んでもらうために、いま伊勢谷さんとわれわれでやろうとしているのは、消費者に対してそれぞれの服(商品)にどのくらいの「環境負荷」(CO2の排出量や水の使用量など)があるのか、わかりやすく「スコアリング(数値化)」して情報提供することです。

<「スコアリング」で消費者の価値観を変える>
福田:グローバルでは「サステイナブル・アパレル連合(SAC)」という団体が「HIGGインデックス」という指標を公開しています。僕らはこの指標を利用して、消費者に「製品のスコアリングを情報提供する」という取り組みを始めています。100点満点で点数が低くなるほど環境によくない製品になる。例えば今日私が着ているウールのジャケットをスコアリングしてみると、55点とかなり低い。

伊勢谷:ウールでも再生ウールであれば、「環境負荷」はぐっと低くなりますよね。

福田:一口に「ウール」といっても、「どこでどうやってつくられたか」によって、スコアリングが変わってきます。

伊勢谷:でも、現状の「環境負荷」を見ると、やはりウールよりもナイロンやポリエステルなどの合成繊維のほうが、スコアが高くなる傾向があります。とくに再生ナイロンや再生ポリエステルは、なおさらですね。

福田:「ウール」「シルク」「アルパカ」なんて聞くと、自然素材でいいイメージがあります。消費者が環境に貢献しようと、あえてウール100%とかコットン100%の製品を買うことが、「環境負荷」につながる可能性もあるというわけです。

伊勢谷:そうですね。シルクの場合、製造工程で原料から製品になるのはたった17%で、あとはすべて廃棄されます。しかし、製造段階で100%使い切ることができれば、シルクのスコアリングが大きく変わってくると僕は思っているんです。「リバースプロジェクト」では、製造工程を見直してシルクの原料を100%使い切るように変えていくプロジェクトを立ち上げています。

福田:適用できていくと面白いですね。

伊勢谷:多くの企業に「スコアリング」を導入してもらうことができれば、「何円の服(価格)」だけではなく、「何点の服(環境負荷)」という価値観が生まれる。そうすれば、消費者への刺激にもなるし、「本当にいいものをつくろう」という企業努力も見えてくる。「どちらの商品を選ぶか」というときに、新しい価値観が生まれると思います。

福田:今回のタイトルとなっているアディダスに話を戻すと、昨年には100%リサイクル可能なスニーカー「フューチャークラフト.ループ」を発表しました。通常、スニーカーは複合材料や接着剤を使用しているため、100%のリサイクルは困難です。ところが、「フューチャークラフト.ループ」は接着剤を使用せず、しかも100%再生利用可能な素材でつくられています。

<日本における「サステイナビリティを軸とした見直し」の必要性>
福田:この研究開発には、主要な素材開発・製造・リサイクルのパートナーと共に取り組み、なんと10年近くの期間を費やしたと聞いています。さらに、同社は、2024年までにすべての製品に100%リサイクルされたポリエステルを採用すると公約していますよね。もう本気度が違います。

伊勢谷:サステイナビリティに本気で取り組むと、結果が出るまで時間がかかりますよね。僕も10年以上「リバースプロジェクト」を通じて取り組んできたので、よくわかります。10年となると、普通の企業は経営者が代替わりしてしまい、取り組みが続かないことが多いでしょう。アディダスのような取り組みは、ゆるぎない企業経営のあり方や理念が存在しないと到底できません。

福田:そうですね。やはりドイツをはじめとする欧州の会社には、サステイナビリティに対してしっかりとした考え方があり、企業活動にまで落とし込まれている会社が多いという印象があります。国レベルでも環境先進国が多いですし。「ポストコロナの時代」は、企業の社会的責任やサステイナビリティに対する消費者の目はいっそう、厳しくなると思います。日本の企業も、サステイナビリティを軸としたサプライチェーンや事業の見直しが必要なタイミングではないでしょうか。

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