東大研究所 がれきと廃木材でリサイクルコンクリートを開発
2020/03/18
ニュース
建築物や道路、ダムなどに使われるコンクリートは、セメント、砂、砂利、水などを原料とし、新たにコンクリートを作るためのセメント製造においては、多くのCO2が発生し、全産業の5%に相当するため、現状、環境負荷となっている。
毎年約3500万トンと大量に発生するコンクリートのゴミである「がれき」も、環境に負荷をかける廃棄物として問題として対策が急がれている。今までに、このがれきを何かに役立てようと、リサイクル技術の開発も進められているが、その多くは路盤材料として、道路建設の際に舗装の下に埋められているだけとなっている。また、古くから日本家屋に使われてきた廃木材も、年間約800万トン以上で大量発生しているが、その多くがリサイクルされることなく焼却や埋立処分されている現状が課題となっている。
これらの課題を解決するため、東京大学の生産技術研究所が、がれきと廃木材のより持続可能なリサイクルを促す新たなコンクリートを開発。同研究チームは、コンクリートのがれきと廃木材を粉砕して混合し、加熱圧縮成形することで、土木や建築材料としてリサイクルすることに成功した。このリサイクルコンクリートは、従来のコンクリートよりも数倍高い曲げ強度を持つ性質になるという。
リサイクル過程で必要な材料は、がれきと廃木材と水だけ。多くのCO2を発生させる新たなセメントは必要なく、温室効果ガスの排出抑制効果も見込める。
このリサイクルコンクリートでは、木材成分の一つである「リグニン」ががれきを接着する役割となり、リグニンは多くの植物に含まれており、廃木材の代わりに野菜や落ち葉、製紙工程で発生する成分等でも代用が可能という。また、リグニンは特定の菌によって生分解されるため、処分が簡単で、環境への負荷が低いというメリットがある。この技術により、がれきのリサイクルを促進し、がれきの価値を高め、さまざまな植物性資源を有効活用し、循環型社会の実現に貢献する効果があると研究チームは意気込んでいる。
リサイクルコンクリートの用途としては、内装材や外壁材や合板の代替など、さまざまな土木・建築分野が想定される。また、チームはセメントの代わりに植物成分で砂や砂利を接着する新たなコンクリート製造への応用も可能との考えを明らかにしている。
当研究成果は、東京大学生産技術研究所研究速報誌「生産研究」で2020年3月1日に公開。
今夏に福岡で開催される国際学会ConMat’20(The Sixth International Conference on Construction Materials)で発表予定。
東京大学生産技術研究所が開発する、がれきと廃木材を使った循環型社会の実現に貢献するリサイクルコンクリートは、将来の展開が注目される。