人工太陽灯でプラスチックを分解 シンガポール研究
2019/12/18
ニュース
シンガポール・南洋理工大学(NTU)の研究チームが、人工太陽灯を用いてプラスチックを有用な化学物質に変えることのできる、環境配慮型の手法を考案したと発表。できる化学物質は「ギ酸」で、エネルギー生産に役立つとされている。
世界では、大量のプラスチックごみが山のように積み上げられたり、海洋に不法投棄されたりしており、大きな環境問題となっているにも関わらず、この問題に対して、アジア諸国は対処できていないと批判されている。そんな中、シンガポールの研究チームは、安価で環境を損なわない触媒を用いてプラスチックを「ギ酸」に変換することに成功したと発表。生成されたギ酸は発電所での発電に利用できるという。同チームは、研究室でプラスチックと触媒となる化合物を混合して溶液を作り、この溶液に太陽灯の光を照射して分解反応を生じさせる実験に成功。プラスチックは6日間で分解。研究チームは将来的に、このプロセスを本物の太陽光の下で実行できるようにすると目標を示している。
2年間に及ぶ研究プロジェクトを率いたNTUのスー・ハンセン氏は、「今回の研究は、海洋汚染を引き起こしているプラスチックを、有用な化学物質に変えることを可能にしている」、また「この手法をカーボンニュートラル(炭素排出量実質ゼロの状態)の完全な再生可能プロセスにしたいと考えている」と話している。
プラスチック再生利用におけるその他の方法では、通常は化石燃料を用いてプラスチックを溶解する必要とされており、化石燃料は気候を損なう温室効果ガスを生成する。
現時点では、ギ酸に変換できたプラスチックはごく少量しかなく、今後は更に規模を拡大してこのプロセスを再現せねばならず、大きな課題があるとスー氏は語っている。
研究を進展には、さらなる人的資源と資金が必要となる見込み。現在、対象となっているのは純粋なプラスチックのみで、プラスチックごみを用いた実験はまだ実施されていない。