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JR貨物、ごみ輸送に商機―環境ネットワーク構築(EarthTopics)

2008/11/14

ニュース

 日本貨物鉄道(JR貨物)が意外な物質の鉄道輸送に力を入れている。プラスチックの残骸や下水汚泥、焼却灰といった廃棄物だ。名付けて「静脈物流」。環境負荷の少ない輸送手段として、トラック輸送から鉄道への「モーダルシフト」に注目が集まるが、JR貨物はごみにも商機を見いだし布石を打ちつつある。環境の世紀ならではのネットワーク事業の将来性と課題を探ってみた。

 山口県周南市の新南陽駅。青いコンテナを数珠つなぎにした貨物車が滑り込んだ。フォークリフトが近付き、てきぱきと積み替えると、トラックは約二キロメートル先、瀬戸内海に面したトクヤマのセメント工場に向かう。ふつう原料輸送の風景に見えるが、コンテナの中身は実は首都圏で排出された廃棄プラスチックだ。

 建設現場で出た廃材や食品工場で排出された包装フィルムの切れ端などを中間処理業者が集め五トンコンテナに一杯になると、JR貨物の仕立てたトラックが取りに行く。そしてターミナル駅で貨物列車を編成し、山口県へ“出荷”となる。

 JR貨物がやっているのは単なる「ごみの運び屋」ではない。同社が環境時代の貨物輸送と力を込める「静脈物流」は、廃棄物を社会システムの中で体の血液のように再利用して循環する仕組み作りを目指している。

◆セメントに利用◆

 トクヤマは廃棄物をセメント製造に使う。セメントには高熱処理の製造工程があり、燃料に石炭の代わりに安価な廃プラスチックを使うのだ。西日本にはセメント工場がひしめく。距離的に近い関西圏で出る廃プラは奪い合い。トクヤマは調達先を関東に広げるために、全国に広がる貨物の線路網に目を付けた。

 二〇〇〇年に試験的に始め、今ではコンテナで月三百個、約千五百トンの廃プラを運ぶ。セメント原料用の下水汚泥の輸送も始めた。埋め立て処分の場所確保に悩む自治体からの問い合わせは後を絶たない。静脈物流の主役、自治体関連ごみはこの四年で輸送量が四割近く増えた。貨物輸送の平均伸び率よりはるかに高い成長スピードだ。

 JR貨物が静脈物流に着目するきっかけは、一九九五年の阪神淡路大震災だった。家屋倒壊で大量の廃棄物が発生したが、地元では処分しきれない。首都圏の自治体が応援することになり、輸送手段としてJR貨物の線路網が使われたのだ。

 震災と前後して、川崎市で内陸部の生活廃棄物を臨海部の処理施設を専用列車で結ぶコンテナ輸送を始めた。その後、都市開発ブームを背景に建設現場で発生する土砂の輸送にも手を広げ、悪臭や廃液が漏れないコンテナの開発などノウハウを蓄積していった。発電所の焼却灰、有価金属の抽出、電子部品工場の廃液――。累積の顧客数は市町村が約七十、企業は一千社に達した。

◆埋め立て用廃止◆

 だが、同社は大きな方向転換をする。埋め立て関連の輸送を減らし、〇七年度には全部打ち切ったのだ。「廃棄物を右から左に動かすだけでは社会から理解を得られない」。静脈物流を統括する飯塚裕・環境事業部長は静脈物流に特化した理由をこう説明する。

 廃棄物関連の輸送量は二〇〇三年度の四十九万一千トンをピークに現在は八割程度まで落ちた。そこで独り気を吐いているのが、自治体関連の静脈物流だ。環境事業として定着するには、自ら高いハードルを課すことが必要と判断したという。

 現在の事業収支はトントン。課題は効率的なごみの受配送網を築けるかにかかっている。

 静脈物流はいわば「環境時代の宅配便」に例えられる。ヤマト運輸が不可能と考えられていた個人宅配市場を創出できたのは、全国規模の集配ネットワークをいち早く築いたことが大きい。静脈物流も廃棄物の排出場所や搬入先の近くに貨物駅があるとは限らず、トラック会社などとの連携がカギになる。大量輸送に向く鉄道の特性を生かすには、工業団地の複数企業から一括受注するなどの仕掛けも必要だ。

 ネットワークを流れるトラフィック量がある水準点を超えた時、ネットのどこかで利益が少しずつたまり出し、合わせると多額の利益を生む――。これが宅配便に限らず、情報通信、航空、IT(情報技術)などあらゆるネットワーク事業の「勝ち組」に共通するモデルである。JR貨物が狙っているのもこれだ。

 ごみ問題に苦しむ自治体は数多い。潜在的な荷主と、ごみを資源として活用したい相手をマッチングできれば、収益に貢献する日もそう遠くなさそうだ。

出典:日経産業新聞


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