食品ロス減らさねば 国内800万トン排出
2014/01/06
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まだ食べられるのに捨てられる「食品ロス」。国の推計では食品メーカー、小売店などの企業や家庭から年間で500万~800万トンが排出されており、日本のコメ生産量に匹敵する。全国的には大手企業が連携して、ロス削減に向けた取り組みが始まっている。県内の動きとともに探った。
店のルールで廃棄
手付かずのクロワッサン、ラーメンの麺、卵焼きなどの総菜―。大分市福宗にある食品リサイクル工場には毎日、契約する市内のスーパーやパン屋、学校などからトラックで回収したさまざまな食品の残り物が運び込まれる。その数量は1日約2トンに上る。
「大半はまだ食べられるが、店のルールで廃棄された売れ残りなど」。工場を運営する環境整備産業の内川慶一郎リサイクル事業部長は説明する。回収した物は機械で発酵させ畜産の飼料として販売するが「リサイクルされなければ焼却されるだけ」という。
農林水産省によると、食品関連の企業から出る年間のロスは300万~400万トン。無駄の削減が課題となっている。
大手の菓子・飲料メーカーや卸売業、スーパー、コンビニなど小売業35社は8月から半年間、商習慣を見直し、納品期限を長くする取り組みをしている。
「3分の1ルール」と呼ばれる習慣は、製造日から賞味期限までの3分の1を過ぎると納品できない。賞味期限が6カ月の場合、2カ月を過ぎると納品前でも廃棄しなくてはならない。これを1カ月延ばして「2分の1」に緩和し、無駄を減らせるか実験している。
「難しい」と本音も
県内には必ずしもこうした商習慣はなく、業界ぐるみの動きもまだ波及していないが、個別には工夫も見られる。
県内にスーパー13店を展開するマックスバリュ九州(福岡市)は6月から空揚げ、コロッケなど総菜の製造計画に過去の販売データを反映させる基本の徹底を指示。すると、6~11月の廃棄による月別損失額は前年に比べ7・1~28・5ポイント減った。一方でロス削減を進めることは現実的に難しいとの本音も聞こえる。あるスーパーの担当者は「むしろ鮮度を重視する消費者ニーズへの対応を強化しないといけない。常に新鮮で豊富な品ぞろえが求められ、ある程度のロスはやむを得ない」と苦悩をにじませた。
農水省食品産業環境対策室は「単体の企業ではなく、業界でつながり、考える仕組みが必要」と強調する。
「もったいない」意識を
正月は雑煮、おせちとたくさんの料理を楽しむ時季。無駄が出ないよう心掛けたいところだが、食品ロスの半数に当たる200万~400万トンは家庭から出るといわれる。
問題の啓発に努める県生活学校運動推進協議会(小野ひさえ会長)が7月に県内の主婦千人を対象に実施したアンケート(回収率96%)によると、「食品を買ったまま手付かずで廃棄した経験があるか」との質問に対し、「よくある」「時々ある」と答えた人の割合は8割に上った。
生活学校のメンバーらからは「買い物に行くと、すぐ使わない食品でも千円、2千円分はつい買ってしまうことはある」「冷蔵庫にしまった物は忘れがちで期限切れになる」といった声が聞こえる。
若い世代への啓発が必要とする声も。ダイコン、ニンジンの皮を使ったきんぴらなど、食材を無駄なく使う調理を心掛ける大分市西部生活学校の佐藤真子代表(77)は「核家族化でこうした知恵を伝える機会が少なくなり、若い人の関心が低い」と感じる。
消費者庁は家庭の食事だけで1人当たり年間約60回の食事分(15キロ)を廃棄していると指摘。同庁、県は▽賞味期限は「おいしく食べることのできる期限」ですぐに廃棄しない▽買い物は必要に応じてする―といった基本を呼び掛ける。
小野会長は「大切なのは命の根源である食について、一人一人が『もったいない』との意識を持てるかだ」と話す。
出典:大分合同新聞社