遍路道・不法投棄 由岐坂峠清掃97トン回収
2011/02/21
ニュース
ごみのお接待はもうやめよう――。
遍路道に不法投棄された缶やペットボトル、タイヤや家電などごみの撤去作業が20日、美波町の由岐坂峠で行われた。地元の住民が中心となり、県内外から560人が参加し、97トンのごみを撤去。歩きお遍路さんも協力し、急な崖からごみを拾い上げた。
次々集まるごみに、参加者たちは「こんなにあるとは」「今まで気付かんかった」と一様に驚いていた。
遍路道の清掃活動に取り組むNPO法人「徳島共生塾一歩会」(徳島市)が昨年10月から3か月かけて、県内の遍路道や裏道などを総点検。その結果、由岐坂峠では特に大量のごみが捨てられているとして、同法人がコーディネーター役を務め行政や住民が一体となり、クリーンアップ作戦を実施することになった。
同峠は木が密集し、作業がしにくいため、1週間前に樹木の伐採や草刈りを行った。参加者は当日、午前9時から1・6キロの峠を6班に分かれて作業を開始。レッカー車やダンプなど重機を出動させ、バケツリレーをしながら崖下から次々とごみを運び出した。
ある崖では、発泡スチロールで埋め尽くされ、「雪が積もってるみたい」と参加者を驚かせた。総菜のパックや缶などの大量の家庭ごみやタイヤやスレート、瓦、自転車なども。「土が見えんやないか」「掘っても掘ってもごみだらけや」。用意したごみ袋があっという間に満杯になり、あちこちで「ごみ袋もうないん」「ロープで引っ張って」という声が響いた。
地元で民宿を経営している中山純一さん(40)は、中学生の時によく飲んでいたジュースの缶を見つけたといい「20年以上捨てられ続けたごみが層になっている。怒りというより情けない」と声を落とした。
お遍路さんも参加した。歩き遍路の案内をしている奈良県大和郡山市の団体職員、山下正樹さん(66)は「崖のため、歩き遍路しか気付かない。お接待をしてくれる温かい人がいる一方で、ごみを捨てる人もいるなんて残念。お遍路さんもお返しの気持ちを込めて積極的に取り組まないと」と白装束姿で、作業をした。
分別作業では、地元の女性たちが中心となって可燃、不燃、缶瓶ペットボトルなどに分けた。縫製業、藤本和美さん(65)は「缶やペットボトルが多かった。捨てる人は『缶一つ』の意識かも知らんけど、それが積もってこんなになってしまったんやね」と運ばれてくるごみを手際よく分別。午前中でほぼ作業が終了した。
NPO法人の理事長、新開善二さん(74)は「早く終わったのも560人の力の結集のおかげ。地元の人たちが中心になることで、『遍路道を大事にしよう。守ろう』とする意識が出てくることが作業の一番の意義」と話した。今年の秋には鳴門市の遍路道でも撤去作業をする予定にしている。
出典:読売新聞