蛍光灯の水銀、回収進み輸出急増
2008/11/17
ニュース
水銀はかつて、化学品を製造する過程で触媒などとして大量に利用されていた。だが、水俣病の原因物質として、1970年代から需要は急減。触媒のほか、電池や農薬の材料など多くの需要が代替材に移り、最近の年間国内需要量は最盛期の100分の1以下、10トン強しかない。
その水銀のリサイクル量が近年急増している。最大手の野村興産(東京・中央)は北海道北見市の鉱業所に、全国各地から使用済みの蛍光灯や水銀に汚染された土壌などを集め、水銀を回収する。2007年度の回収量は国内需要の20倍を超える240トン。国内需要は増えないのに、5年前の10倍に増えた。
回収された水銀の多くは、国内ではさばけず、まだ化学品製造の触媒に水銀を使う中東や東欧などに輸出される。欧州連合(EU)が水銀の輸出入の規制を進めた06年以降、国際市場の単価は跳ね上がった。世界景気の変調でも高値は続いている。
水銀の数少ない国内での利用先が蛍光灯だ。1本に含まれる水銀は10ミリグラム。リサイクルする自治体は半分に満たないとされ、多くはなお「燃えないゴミ」として埋め立てられている。有害物質の大量輸出に首をひねる声もある一方、利用先がなければ回収は進まない。白熱灯より電力消費量が少ないため、エコ商品とされる蛍光灯だが、エコと言い切れない現実も浮かび上がる。
出典:日経産業新聞