横手市のゴミ処理施設 計画が難航
2010/04/22
ニュース
横手市が進めるゴミ処理施設の事業が、予定地の周辺住民の反対に遭い、暗礁に乗り上げている。市は当初、スムーズに行くと安易に考えていたが、反対の声は次第に大きくなり、市幹部は予定地変更も示唆し始めた。ゴミ処理施設は既に老朽化しており、一刻も早い建設が望まれるが先行きは暗い。
3月31日夜、横手市内の公民館で開催された第2回住民説明会。殺気だった会場の雰囲気に、市幹部は困惑の表情を浮かべていた。
「なして住宅地がある場所に作るんだが」「何かあった時は補償してくれるんだが」
建設反対の住民約40人が詰めかけ、開始早々から声を荒らげていた。五十嵐忠悦市長らは、なだめながら、ゴミ処理施設の建設計画を説明しようと試みたが、状況は悪化するばかり。「絶対反対」「何回説明しても変わらない」と住民が繰り返し叫ぶようになり、話し合いは平行線で終わった。
五十嵐市長は「それなりの理解を得られていると思っていたのに。言われたことを整理して考え直したい」と落胆した表情だった。
横手市には3つのゴミ処理施設がある。耐用年数は20年が目安だが、18~26年も経過しており、新施設を建設し、順次解体していく必要があった。
市はまず、2009年に市中心部に近い工業団地周辺を候補地に決めたが、周辺住民の反対で同年末に白紙撤回した。
そこで、仕切り直しに当たって、市は既存の3か所のゴミ処理施設周辺から候補地を選べば、「理解も得られやすい」と考えた。その結果、今年1月、最も交通の便が良い点などから、「南部環境保全センター」(十文字町)の周辺が、予定地となった。
市は周辺住民に対し、2月20日と3月8日の2回に分け、第1回説明会を実施。15年の稼働に向け、建設スケジュールや施設の規模などの事業概要を説明した。その際、反対意見も出たが、上水道や道路の整備に対する要望も出てきたため、市は「話し合いに応じてくれるのだろう」と解釈した。
しかし、住民側は、そのような受け止め方はしていなかった。「市ゴミ処理統合施設を考える会」の藤原勲代表(68)は「市の説明は始めから結論ありきだ。他の候補地が断られたからって、また私たちに押しつけるのか」と、選定の経緯に不満を漏らした。
その後も、住民の反対運動は加速する。4月9日には周辺3集落の住民111人分の反対署名を添えた陳情書を提出。五十嵐市長に撤回を求めた。
これを受け、市は幹部会議で協議したが、最大で約100億円の総事業費を合併特例債を活用しなければ賄えないことや、施設の老朽化を考慮し、「方向性はこれまで通り」とした。
だが、反対住民は21日も集会を開き、範囲を広げた署名活動について話し合うなど活発化しており、「正直、見通しが立たない」(鈴木信好副市長)と弱気な発言も出てきた。
ゴミ処理施設での勤務経験がある幹部は「事前に住民と信頼関係を築いていることが大切。建設の時だけ話し合うからこうなる」と批判する。
また、別の幹部は「市役所内で議論している内容が市民に伝わっていない。だから『何だいきなり』となり、反発を招くのだ。予定地を白紙に戻し、開かれた形で議論をする必要がある」と指摘する。
出典:読売新聞