東日本大震災:東北4県、津波でPCB流出 廃棄物に含有 環境省、海洋調査
2011/07/12
ニュース
東日本大震災の津波により、東北4県の沿岸部で有害化学物質のポリ塩化ビフェニール(PCB)を含むコンデンサー(蓄電器)やトランス(変圧器)の廃棄物100台以上が、保管場所から流失していたことが、環境省などへの取材で分かった。同省は海水の環境モニタリングを開始し、海洋環境への影響を調べている。
PCBは、戦後、絶縁油や熱媒体として、ビルなどの受配電設備のトランスやコンデンサー、工業機械などに広く使われた。1968年の食品公害「カネミ油症事件」の原因物質となり、72年に製造禁止。PCB特措法で、PCBを含む廃棄物の所有者は、保管状況の届け出や16年までの無毒化処理が義務化されている。
同省は、6月20日時点のトランス、コンデンサーの保管状況を調査。宮城の86台を中心に、岩手26台、福島9台、青森1台の計122台が、自治体や民間業者の倉庫などからなくなっていた。
海に流されたり、陸上のがれきに混入しているとみられる。このうち高濃度のPCBを含むものは47台。PCB量は不明だが、1台当たり30キロと仮定すれば1トン程度になる。
同省は5月下旬から海水のモニタリングを開始。岩手、宮城、福島沿岸では検出されず、その他の沿岸で採取したサンプルの分析も進めている。PCB汚染に詳しい愛媛大沿岸環境科学研究センターの田辺信介教授は「流失量は多量ではないが、魚介類では海水の1万倍程度に濃縮されることもある。
人の安全を確実にするため、魚類もモニタリングすべきだ」と話している。【中村敦茂】
出典:毎日新聞