悪質不用品回収の取り締まり 「無料でも廃棄物」に前進か
2010/12/15
ニュース
悪質な廃品回収業者が増加し、政府が取り締まりを強めている。“グレーゾーン”の廃棄物について、環境省が異例の通達を出した。
不法投棄や無許可営業をするような悪質な不用品回収業者への取り締まりを国が強化している。背景には、不用品回収業者の増加に伴って、消費者の苦情が増えていることがある。
それに伴って「廃棄物」の概念が問い直されている。基本的には「不用品で価値のない(売れない)もの」だが、単に金額だけではなく、「占有者の意思」など様々な点を考慮すべきという最高裁の判例がある。
一般廃棄物の収集・運搬・処分には許可が必要だ。許可なしに消費者からお金をもらって廃棄物を収集した場合は廃棄物処理法違反となる。ただし、無料で引き取った場合に廃棄物に当たるかは“グレーゾーン”とされてきた。法から逃れるため、無料で引き取ったり、5円程度の小額を渡したりする業者も少なくない。
2010年10月、環境省は都道府県や政令市に管内市町村に指導を要請する通達を出した。そこには「無料で引き取る場合や著しく低廉な価格で買い取る場合でも、廃棄物の疑いがある場合には報告の徴収または立ち入り検査を実施すること」とある。
同年9月、同省リサイクル推進室が運営する「使用済み小型家電からのレアメタルの回収および適正処理に関する研究会」で配られた資料では、廃家電を不用品回収業者などが回収し、輸出する流れを「ルートの一部が違法の可能性あり」とした。
不法投棄や海外での不適正処理といった「見えないルート」は環境汚染を招く恐れがある。また、年間40万tの銅スクラップが輸出されており、なかには違法なものもある。国内の年間銅精錬量は150万tだから、無視できる量ではない。
「無料でも取り締まる」と打ち出したい意見と、判例にのっとり市町村の判断に委ねるべきという意見の間で、環境省内にも温度差があるようだ。だが、不用品回収の実態にメスを入れる方向では一致する。不法回収された廃家電の輸出という出口をふさぐために税関など関係機関との連携した水際対策を強化している。
出典:ECO JAPAN