廃棄物発電を普及させる政策の望む
2015/05/25
ニュース
ゴミの焼却エネルギーを利用する廃棄物発電投資が停滞している。1990年代には地産地消型エネルギーとして注目され、政府は「新エネルギー導入大綱」で拡大方針を打ち出したが、目標に達していない。発電設備を併設した焼却施設の普及策の見直しを望みたい。
政府は6月中にも2030年の望ましい電源構成(ベストミックス)を確定するが、この間の議論は原子力か再生可能エネルギーかの二者選択に集中した感が強い。「3つのEとS」(安定供給・経済効率性・環境性と安全性)に基づくエネルギー政策のあるべき姿に踏み込めないまま原案が策定された。
廃棄物発電は再生エネの一つに位置付けられ、12年7月に施行された再生エネ固定価格買い取り(FIT)制度では、廃棄物発電における廃棄物バイオマス比率をFIT対象に限定して導入された。しかし対象が限られたことで普及を阻害した。
環境省の12年度調査によると、全国に1189の一般廃棄物焼却施設があるが、発電設備があるのは318、全体の27%にとどまる。03年度の271よりは増えたが、発電設備比率はほぼ横ばい。都市ゴミの発生量が減少して焼却量が減少していることも背景にある。産業廃棄物処理で発電設備を持っている施設は65にとどまり、全体の18%に過ぎない。
エネルギー供給構造を強化するには多様な電源を模索しなくてはならない。廃棄物発電はゴミ発生量の減少という制約はあるが、未利用木材資源などバイオマスと混ぜて処理量を増やせばCO2削減にも貢献できる。バイオマス専用発電設備の投資は簡単に踏み切れないが、既存の廃棄物焼却炉を利用すれば投資金額の抑制も可能だろう。
バイオマスを使う廃棄物発電の設備利用率を向上させるとともに、新規投資を拡大させるには規制緩和など政策支援が不可欠だ。新エネルギー財団では、バイオマスを燃料として使用する場合、熱量の30%を上限とする燃料投入量制限を50%に引き上げるなどの規制緩和を求めている。バイオマスの有効利用としての政策効果も大きい。
廃棄物発電はプラスチック廃棄物処理も含めて地域の環境保全に貢献する。ただ廃棄物量に制約されることで小規模施設になりがちで、現在のFIT調達価格では投資回収が容易でない。この対策に規模に応じた価格体系を設定すれば投資の支援効果も見込める。
廃棄物発電でエネルギー供給構造に抜本的改革を促すことはできないまでも、多様かつ柔軟な環境・エネルギー政策に貢献する。このような小さな積み重ねも大事にしたい。
引用:化学工業日報