廃棄物処理にも「排出枠」 企業間で売買 温室ガス削減加速
2009/07/13
ニュース
環境省は、廃棄物処理やリサイクルの過程で発生する温室効果ガスの削減を促すため、産業廃棄物処理業者や自治体などを支援する新たな枠組み作りを行う方針を固めた。
同省が、2008年11月に始めた制度を活用するもので、排出削減に積極的な業者に対し、ほかの企業などに売却できる「排出枠」を与える。廃棄物分野の排出削減は、コストがかかり割に合いにくいとされるが、新たな枠組みを通じて費用負担を減らす狙いがある。
環境省は14日、京都大学や全国都市清掃会議、国立環境研究所などの有識者による研究会を発足させて、具体的な制度設計に着手。今年度中に方向性を示す。
同省が活用しようとしているのは「オフセット・クレジット(J-VER)制度」と呼ばれる排出枠認証制度だ。対象プロジェクトに選ばれると排出枠が与えられる制度で、排出枠を得た企業は、それを排出削減が進んでいないほかの企業などに売れる。廃棄物・リサイクル分野では、例えば産業廃棄物の最終処分場から発生するメタンガスの削減や、自動車用の軽油を廃棄物が原料の燃料に転換する事業などが想定されているという。
14日に発足する研究会では、廃棄物分野での温室効果ガス排出量の算定方法などを詳細に議論し、排出枠の“質”を担保するために必要なルールも検討する。
地球温暖化防止に向けた国際的な取り組み「京都議定書」で、日本は08~12年中の温室効果ガスの平均排出量を1990年比で6%削減することを約束した。だが、現状では達成が困難で、07年度の排出量は二酸化炭素(CO2)換算で9.0%も増えている。
このため政府は対応に懸命だ。廃棄物分野は、温室効果ガス総排出量の約3%にすぎないが、2007年度の排出量は基準年比9.8%増の4083万トンにのぼっている。
その背景には、企業や自治体に環境投資の余力が少ないという事情もあり、環境省は排出枠を与えることで排出削減を加速したい考えだ。
出典:フジサンケイ・ビジネスアイ