小型家電リサイクル、自治体で格差
2014/06/02
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使用済みの小型家電製品から貴金属やレアメタル(希少金属)を取り出して再利用する制度を定めた「小型家電リサイクル法」が昨年四月に施行されて一年余り。回収に取り組む自治体は全体には増えてきたが、地域によるばらつきは大きい。制度を軌道に乗せるかぎは何か。愛知県豊田市の事例をもとに考えてみた。
この制度の特徴は、自治体が携帯電話やパソコンなどの小型家電の回収事業の実施を義務づけられていないことだ。事業をスムーズに運営できないと判断すれば、先送りしていてもよい。豊田市の場合は、二〇〇九年十一月から試行し、一〇年十月から本格的に実施した。市内の「トヨキン」にリサイクルを委託できることが強みだった。金属資源や自動車のリサイクルなどで実績がある会社だ。
豊田市は以前から、小型家電を「金属ごみ」という分類で収集している。市内各地にある資源ごみのステーションに月一回、市民が持ち込む方式だ。
金属ごみは、同社の工場に運ばれ、そこで手作業で小型家電がピックアップされる。その後は、熟練の作業員が分解する工程。さまざまな製品から手作業で基板類、電線類、アルミくず、銅くずなどをより分ける。基板などは大きな袋に入れられ、国内の精錬メーカーに運ばれる。最終的に、精錬メーカーの工場で金や銀などの貴金属、パラジウムなどのレアメタルが抽出される。
豊田市のこのルートでの抽出量は、これまでの約四年間で金は約二トン、銀は約十五トン、パラジウムは約〇・二トン。小型家電リサイクルが「都市鉱山」といわれる理由が分かる。
豊田市は「廃棄物が希少金属の回収のための有価物に変わった」(ごみ減量推進課)と強調。市のごみ焼却施設の中に投入する銅や鉛が減ったため、灰処理に使う薬剤(キレート剤)が年間約四千万円ほど節約できたという効果も説明する。
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小型家電リサイクルに取り組んでいる自治体の数は、環境省が調査中ではっきりしない。横浜市、さいたま市、名古屋市など全国各地の大都市の大半が実施しているので、順調といえそうだ。ただ、都道府県ごとの格差は目立つ。石川、富山の両県は県内のすべての自治体が実施している半面、滋賀県では彦根市しか実施できていない。
この制度では、小型家電は「消費者→市区町村→リサイクル事業者→精錬事業者」という経路で流れる。自治体の立場では、地元に信頼できるリサイクル事業者があるかどうかは大きな要素だ。北陸二県では、ハリタ金属(本社・富山県高岡市)に委託している自治体が多い。
事業を実施している自治体でも、小型家電の回収量の差は大きいようだ。回収方式は主に三つ。資源ごみのステーションで回収したごみの中から抜き取るピックアップ回収と、市内各地に小型家電の専用投入箱を置くボックス回収、イベントを開いて集めるイベント回収だ。
身近なステーションに持っていく方式が、回収量が多くなる傾向にあるようだ。豊田市は毎月、小型家電を二十五~三十トンほど収集。ボックス方式の名古屋市の四月の収集量は約十六トンにすぎない。人口は名古屋市が約五倍。
各地の自治体の担当者らは「家庭に眠っている使用済み小型家電は多いはず」と口をそろえる。サイズが小さいので、それほど邪魔にならないからだ。この制度の住民啓発が重要なのは間違いない。
出典:中日新聞