富士に不法投棄の山 不況で業者が発覚後も産廃放置
2010/05/02
ニュース
世界的な不況の影響もあり、富士山南ろくに不法投棄された産業廃棄物の撤去が滞っている。静岡県当局は投棄した業者に撤去を指導するものの、経営難を理由に応じないケースも。地元住民から「いつまで放置し続けるのか」といった憤りの声が高まっている。
富士市大淵の土採取場。人工林に囲まれた敷地の一角に直径最大30メートル、深さ5メートルほどの穴が掘られ、中にはプラスチックやガラス、石こうなどの産廃が散乱している。
県廃棄物リサイクル課によると、この産廃を捨てたのは富士宮市の建材業者。2008年5月の約1カ月間で260立方メートル分を投棄した。石こうは一時、化学反応を起こし、有毒の硫化水素が発生していた。
建材業者は産廃を運搬、処分する許可を県知事から得ていなかった。土採取場は業者自身の所有地だが、産廃を捨てるのは違法。経営者の男性は廃棄物処理法違反(不法投棄)の罪で起訴され、同12月、静岡地裁富士支部で執行猶予付き有罪判決を言い渡された。
だが、発覚から2年たった現在も産廃は放置されたまま。県東部健康福祉センターは再三、産廃を処分するよう指導してきたが、応じないという。
現在、建材業から撤退している男性は本紙の取材に「処分費が工面できなかった。3月に産廃処分の計画書を県に提出した。すぐ撤去作業に入るつもり」と釈明する。
同センターによると、富士、富士宮の両市で、野外に不法に投棄・保管されている廃棄物(100立方メートル以上)が県当局に撤去指導を受けた後も放置されている場所は現在9カ所。センター管内全体では計19カ所で、ほぼ半数が両市に集中している。ひどい個所では、廃材など約900立方メートルが10年前から野ざらしになっているという。
県廃棄物リサイクル課が富士山ろくで発見した不法投棄は、09年度までの6年間で85件と、県全体の半分近くを占める。同課は「交通の便が良く、人目に付かない森林が広がっていて、不法投棄の標的になりやすい」と頭を抱える。
同課によると、放置する業者の大半が今回の建材業者のような中小業者。世界的な不況の中で低価格の受注を迫られ、処分費を浮かすために不法投棄に手を染め、発覚後も資金難で撤去できないケースも多いとみられる。
とはいえ、産廃を放置される地元の住民から見れば、業者の“甘え”は許されない。県の産業廃棄物不法投棄監視員を務める岩間定男さん(59)=富士市大淵=は「これ以上の不法投棄は許さない」と憤り、日常のパトロールなどで防止態勢を強化する方針だ。
出典:中日新聞