家電リサイクル正念場(中)消えた廃家電―4分の1が海外流出
2008/11/13
ニュース
◇廃家電はどこに消えたのか?◇
昨年十二月。家電量販大手のコジマは政府から家電リサイクルの不適切処理で二度目の勧告を受けた。その年の九月までの三年半の間に、全国二百二十六店から七万六千台余りの使用済み家電がリサイクル料金を受け取っておきながら、リサイクル工場に送られていなかった。
コジマの設置した第三者委員会の調査は、多くが野外放置などのずさんな保管状況の中で、何者かに盗まれたと結論付けた。「まさか、廃家電が無くなるとは……」コジマの小島章利社長は「ガバナンス(企業統治)」の欠如を悔やむ。「しっかりと管理をしておかなければ。そこに気づくのが遅かった」
同社は勧告後、二億五千万円かけて、厳密な使用済み家電の管理システムを作った。もし、早めにシステムができていれば、会社が横流しを疑われることもなかった。
小島社長も分からない廃家電の行き先の一つとして考えられるのが海外だ。
家電リサイクル法が生まれた〇一年当初、廃棄物扱いだった使用済み家電。それが資源価格高騰を背景に、今では転売可能な価値を持つ。家電に含まれている銅や鉄の素材価値が増し、エアコンではリサイクル料金が下がった。素材高が続く限り、業者には転売の誘惑が働く。
法律が作った家電リサイクル網には、すでに三年前から半分近い使用済み家電が向かわなくなっている。使用済み家電の実に四台に一台が海外向けに販売されている。
埼玉県東松山市にある使用済み家電販売、浜屋の倉庫には、集められた電化製品が天井から床までびっしり収められている。同社は全国十九の拠点で、使用済み家電を収集。新興国の景気が良かった〇七年はテレビ六十三万台、エアコン十六万台などを東南アジアやアフリカ、中東など四十カ国に輸出した。
新興国は家電の中にある金属素材だけが目当てではない。「日本製の中古家電は修理すれば長く使えると評判がいい」と小林茂社長。「相手はかさばる家電を高い運賃と関税をかけて買っている。中に含まれている資源を取るだけでは割に合わない」という。
浜屋に集まる使用済み家電の八―九割は、軽トラックで街を流す回収業者から買っている。浜屋の入り口に並んだ回収業者は、集めた家電を一つ数百円、状態の良いものなら数千円の高値で売る。浜屋が海外に売るときは、それ以上の価格で売れているからだ。
回収業者が家庭や事務所から家電を集めるとき、排出者負担はほとんどの場合ゼロ。リサイクルに必要な費用が、このルートを選ぶと不要になる。
家電量販店も、費用をかけて素材に戻すリサイクルだけでなく、費用のかからない再使用(リユース)の仕組みを取り入れている。ヤマダ電機は全国七五%の店舗で、リユースできる使用済み廃家電についてはリサイクル費用をもらわずに引き取って、同社グループの中古専門店で販売している。
浜屋と契約するケーズデンキは、リユース基準にあった使用済み家電を無料で引き取っている。「リサイクル費用が不要になれば、お客様へのサービスになるから」(省エネ推進室)
政府は九月、リユースとリサイクルの仕分けの基準指針を作成した。リサイクル代金をもらいながら不正転売するのは消費者を裏切る犯罪だが、法律が想定しないところで、中古品の隠れた価値を引き出すビジネスが育っている。
国内でのリサイクルだけが唯一の循環システムではなくなっている。
出典:日経産業新聞