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住友金属鉱山四阪工場――亜鉛・鉄のリサイクル(四国の環境力)

2008/07/03

ニュース

瀬戸内海に浮かぶ四阪(しさか)島(愛媛県今治市)。この島にある住友金属鉱山四阪工場はかつて、銅やニッケルの製錬工場として一時代を築いた。約三十年前に製錬工場としての操業を終え、現在は酸化亜鉛製造を主な事業とする「亜鉛のリサイクル工場」として活躍する。近年の環境意識の向上や資源高を背景に、四阪工場の存在感が高まっている。

新居浜港から高速艇で約三十五分。四阪島は約二十キロメートルの海上にあり、美濃島、家ノ島、明神島、鼠(ねずみ)島の四島に、今は梶(かじ)島を加えた五島から成る。島全体が住友鉱山の私有地で、許可がなければ一般の人は上陸できない。

四阪工場では国内鉄鋼メーカーで排出される鉄鋼ダストを回収し、酸化亜鉛と還元鉄ペレットに処理する。鉄鋼メーカーが出す産業廃棄物を引き取り、亜鉛と鉄を製造する資源リサイクル事業を手掛けている。
国内で最大規模

原料の鉄鋼ダストは酸化鉄が主成分で、亜鉛や鉛など有価金属を含む。特別管理産業廃棄物として厳重に扱われる有害物質だが、立派な資源でもあり、四阪工場では二〇〇七年度に十一万五千トンの鉄鋼ダストを処理。処理量は国内最大規模だ。

鉄鋼ダストはまず「還元ばい焼工程」で一千度以上の高熱で焼き、還元鉄ペレットを取り出す。同時に成分中の亜鉛と鉛が揮発し、「湿式精製工程」でそれを洗浄、精製する。その後に「乾燥加熱工程」を経て、酸化亜鉛が最後に残る。

製造した酸化亜鉛は住友鉱山の播磨事業所(兵庫県播磨町)に送り、亜鉛や鉛を製錬する原料となる。酸化亜鉛の生産量は〇七年度に四万八千トンで過去最高。播磨事業所で一年間に生産する亜鉛の約三分の一が四阪工場で製造した酸化亜鉛を原料にしているという。

還元鉄ペレットは鉄スクラップの代替になるリサイクル原料で、鉄品位の高いものを製鋼の原料として再び鉄鋼メーカーに販売している。販売量は〇七年度で二万五千トンと過去最高に上った。

鉄も亜鉛と同様に、近年のリサイクル原料への評価の高まりと、世界的な資源争奪戦の激化が重なり、需要が急増している。貝掛敦工場長は「亜鉛と鉄の二種類の資源をリサイクルし、同時に廃棄物削減を進めているのが四阪工場の特徴だ」と強調する。
煙害を克服

四阪工場での環境負荷低減への挑戦の歴史は長い。かつての別子銅山(新居浜市)などで採れた銅精鉱を使い、四阪島で銅の製錬を始めたのは一九〇五年。当時の技術力では抑えきれなかった亜硫酸ガスの発生による煙害問題を解決するため、遠く離れた四阪島での操業が始まった。亜硫酸ガスを硫酸に変える技術を四阪工場に取り入れ、三九年に煙害問題を完全に克服した。

その後、銅とニッケルの製錬工場として栄え、島には最盛期に人口が約五千人いた。だが七三年に別子銅山が閉山。国際競争力強化に向け、七一年完成の東予工場(愛媛県西条市)に銅製錬が集約されたのを受け、七六年までに四阪工場はニッケル製錬と銅製錬を終えた。

酸化亜鉛の製造事業は、社員の雇用確保と既存の工場設備やインフラの活用のため、七七年に始まった。「公害克服のシンボルである四阪工場で、時代の要請に応じた最先端のリサイクル事業を展開していきたい」と貝掛工場長は話す。
(松山支局 小嶋誠治)

出典:日本経済新聞 地方経済面 (四国), 12ページ

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