一体誰が…ごみ焼却炉に大量の水銀 都内4施設が停止
2010/08/02
ニュース
東京都内4カ所のごみ焼却施設で大量の水銀が検出され、炉が停止する事態になった。施設を管理する東京二十三区清掃一部事務組合によると、部品の交換など被害額は約3億円とみられ、三つの焼却炉が今も停止したままだ。
処理できないごみも増えている。
なぜ、水銀が検出されたのか。組合は「非常に悪質」として、警視庁にも相談し、ごみの搬入経路を調べている。
ごみの山にハエが群がる。6月11日から約50日間、二つの焼却炉の一つが停止している足立清掃工場は、焼却を待つごみがあふれ始めている。
いつもなら、地下12メートルまで掘られた収集場に収まるはずのごみは、一部が高さ8メートルの山になっていた。「ごみが滞留しているからハエが発生しやすくて……」と職員は苦り切っている。
足立工場の1焼却炉のごみ処理能力は1日300~350トン。これが処理できないでたまり、一部を江東区の工場に運んではいるが、ごみの山はなかなか低くならない。ハエ対策に毎晩、15分かけて殺虫剤を散布している。
焼却炉は、排ガス中の水銀濃度を知らせるモニターの数値が急激に上昇したことに監視員が気づき、緊急停止させた。調べると、有害物質を取り除くフィルターのほか、煙が通る道など全体に水銀が付着していたという。焼却を続けると、水銀を含んだ排ガスが外に出てしまうため、フィルター交換や、煙道を清掃しなければならなくなった。
修理費は2億8千万円にのぼり、停止した焼却炉で最も被害が大きかった。復旧は9月上旬になる見込みだ。佐藤進一副工場長は「フィルターはすべて特注品で、時間がかかる。本当に頭にきている」と憤る。
23区内では、足立工場の1炉のほか、7月1日に板橋で1炉、8日に光が丘(練馬区)で2炉、18日に千歳(世田谷区)で1炉と、ほぼ1週間おきに相次いで水銀が検出され、停止した。板橋と千歳は運転を再開したが、光が丘は復旧まであと半月程度かかる見通しだ。
組合の山田裕彦・管理課長は「被害は深刻だ。これ以上の被害を出すわけにはいかない」として、工場のごみ収集場に監視員を増やして警戒を強めている。
しかし、なぜ、焼却炉を停止させるほどの水銀が検出されたのか。これらの工場に運ばれるのは一般家庭ごみを中心とした可燃ごみだ。組合は、産業廃棄物の不法投棄の疑いが強いとみて、廃棄物の特定を急いでいる。
足立工場では、1時間当たり200グラムの水銀を取り除く排ガスの浄化装置を備えているが、今回、炉が停止される直前にこの処理能力を超える排ガスを検出した。どの程度の量の水銀が混入されたかは不明だが、少なくとも200グラム以上の水銀が一度に持ち込まれたことになる。
水銀を含む製品には、蛍光灯や水銀血圧計などがある。いずれも産業廃棄物として細かく砕かれ、専用炉で燃やされるが、一般的な蛍光灯なら2万2千本以上に相当し、組合は「家庭ごみと混ざったとは考えられない」。水銀血圧計には約50グラムの水銀が入っており、4台で200グラムになることから、「可能性があるが、はっきりしたことは分からない」という。
工場へ出入りできるごみ収集車にはICカードが渡され、搬入日時が記録されている。足立工場の場合、事故があった6月11日に持ち込まれたごみから水銀が発生している。他の工場も、検出の数日前までに出されたごみに混ざっていたとみられるため、組合は、該当搬入業者から聞き取り調査をしている。
出典:asahi.com