テレビの不法投棄急増 地デジ完全移行控え
2010/12/02
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テレビの地上デジタル放送への完全移行が来年7月に迫ってきた。今月からの家電エコポイント半減を前にした駆け込み需要でテレビの買い替えが集中、使えなくなったテレビの不法投棄が各地で頻発している。アンテナ工事は数カ月先まで予約がいっぱいの状況で、設置業者は「完全移行に間に合わないかもしれない」と気をもんでいる。
「またテレビか」。9月中旬、静岡県伊豆市の郊外。通報を受けた市職員が駆けつけると、道路脇の草むらにブラウン管テレビが転がっていた。近くにはアナログ電波用のアンテナも。
同市では、これまでテレビの不法投棄が年20台前後だったが、昨年度は170台に急増、処分に約180万円かかった。昨年5月から市民らがパトロールしているものの、今年度も11月末までに89台見つかっている。
11月だけで31台に上り、担当者は「家電エコポイントの半減前に買い替えが殺到した結果、不法投棄が増えたのでは」とみており、「今後も増えると処分がままならなくなる」と心配する。
同じ悩みを抱えるのは埼玉県川口市。今年度は10月末までに不法投棄されたテレビが273台見つかり、昨年度の5割増しのペースで増加している。廃棄物対策課の担当者は「どうしたものか」と弱り顔だ。
デジタル放送を受信するにはアンテナの交換が必要な建物もあり、設置業者も大わらわ。マンションなどにアンテナを設置している「受信サービス」(東京・文京)には月約400件の工事依頼があり、来年1月まで予約がいっぱい。11月から急きょ臨時アルバイトを3人雇った。
ただ、最近はアンテナの材料確保が難しくなっており、「さらに注文が増えれば、7月の完全移行に間に合わなくなる家庭も出てくる」と懸念する。
総務省が設置する「地デジコールセンター」には夏ごろから問い合わせの電話が殺到。問い合わせ件数は4月の約4万件から、11月は約15万3千件に跳ね上がり、同月から回線数を40回線増やして対応している。
「新しく買ったテレビの操作方法が分からない」などの問い合わせが大半だが、中には地デジに使用する電波の特性などから「テレビを買い替えてから、電波障害で放送を受信できないと分かった」という相談もあるという。
出典:日本経済新聞