がれき処理 海を越えて 震災漂着物 ダイバーらアラスカ調査
2013/08/19
ニュース
東日本大震災の大津波被害に遭った漁港などで海底がれきの撤去をしている横浜のボランティア団体などが、震災による津波で海外に漂着したがれきの調査を本格化させている。六、七月には、日本から約六千キロ離れた米アラスカ州のモンタギュー島で調査し、再利用可能な漂着物を所有者に返却できないか検討している。
この団体は「海をつくる会」(横浜市神奈川区)。横浜の観光名所、山下公園前の海底清掃を機に一九八一年に発足。全国のダイバーら百人でつくられ、海底のごみ拾いやアマモ場の造成など「海の緑化」活動を続けている。大震災後の二〇一一年八月からは毎月、宮城県石巻市などの漁港でがれきを取り除き、漁に出やすい環境を取り戻そうとしている。七月中旬には、同市雄勝(おがつ)町で活動した。
今年からは、米国各地の海岸で漂着ごみの調査を始めた。「海外にもがれきが漂着しているとのニュースが届くが、自分で確かめないと対策が思い付かない」と事務局長の坂本昭夫さん(56)は語る。調査は、海洋保全活動をしている東京都国分寺市の一般社団法人「JEAN(ジーン)」や、プラスチックごみの処理技術を持つ企業とともに実施した。
寒冷地アラスカでの活動は夏に限られる。モンタギュー島で現地の非政府組織(NGO)が集めたがれきを坂本さんらが分析したところ、洗剤の容器やペットボトル、スプレー缶、バレーボール、漁船が使う巨大な浮きなどがあった。いずれも日本語が書いてあり、浮きには船名や屋号が記されていた。
浮きは漁に出る際に必要で、被災した多くの漁師は借金して買い直しているという。坂本さんは、漂着した浮きがそのまま使えるなら、持ち主に返却できるようにと、雄勝の漁協などと話し合いを進めている。
今のところ持ち主が分かった例はないが、判明すれば次回のアラスカ訪問時に、保管しているNGOから引き取って日本に持ち帰る計画だ。
アラスカでは、州政府を交えて今後の方針を話し合った。ごみの漂着について、今回は日本が「加害者」になったが、津波によるがれき流出は他国でも起こりうる。がれきの回収を円滑に進める国際的枠組みづくりが提案されたという。
坂本さんは「特にプラスチックや発泡スチロールの漂流ごみは、時間がたつとどんどん細かくなって溶け込んでしまう。生態系を壊す危険があり、早く処理しなければならない」と話している。
出典:東京新聞