震災の「災害廃棄物」受け入れ、県内自治体に温度差
2011/05/24
環境省
東日本大震災で出た2500万トン超の「災害廃棄物」をどう処分するのかが問題となっている。国の照会を受けて、長野県は現在、県内の自治体などに受け入れ可能かどうかを問い合わせている。前向きな自治体がある一方で、施設の能力的な問題や住民感情への配慮から、慎重な姿勢をみせる自治体もある。
県廃棄物対策課によると、環境省から照会がきたのは今月6日。受け入れ要請があったのは粗大ごみを含む一般廃棄物で「がれき」などは含まない。
長野市や小川村のごみを処理する同市清掃センターは「被災地を助けたい」と受け入れる方向で、区長らの了解を取り付けた。1日20トン、年間100日の受け入れが可能だという。
これに対して処理施設の能力から、二の足を踏まざるを得ない自治体もある。
佐久市の場合、施設の処理能力は人口に見合ったもの。ごみの一時保管所も満杯で、施設をフル稼働させて、ようやく処理が追い付いているのが現状だ。担当者は「地元のごみが処理出来なくなってしまうので、受け入れは困難な状況」。須坂市も同様の理由で断念した。
「検討中」とするのは上田市。広域連合で処理しているが、二つある焼却炉は稼働から約25年が経過し、整備しながら交互に動かしている状況だという。
県によると、「地元以外のごみは受け入れない」という約束を住民と交わして処理場を建設しているため、受け入れが難しいケースもあるという。
東京電力福島第一原発事故の影響も無視できない。放射性廃棄物は福島県外には持ち出されないことになっている。しかし、川崎市では4月、市長が災害廃棄物の受け入れを表明すると、誤解した市民から「放射能を帯びたごみを燃やしたら危険」などという苦情や意見が5千件以上も届いた。市は「放射能汚染が確認された廃棄物を持ち込むことはありません」とする説明をHPに載せるなど、「火消し」に追われた。
こうした前例があるだけに、各自治体も慎重な姿勢で臨んでいる。
松本市と山形村の可燃ごみなどを取り扱う松本西部広域施設組合は「地元町会の代表者らに、受け入れは一般廃棄物のみで、放射能に汚染されたものは含まれないことを説明中」という。北信保健衛生施設組合に加盟する中野市も受け入れる方向だが、「地元の合意が大前提」と強調する。
県には、各自治体から「どこのごみを受け入れるのか」「どうやって運んでくるのか」「期間はどのくらいか」といった問い合わせが相次いでいるという。しかし、担当者自身も「国の方針が決まっておらず、答えようがない」と困惑している。
出典:asahi.com