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産業廃棄物:安定型最終処分場はいま/上 「安全」なのに防げない汚染

2008/11/25

環境省

◇展開検査導入後も続く違法混入

 産業廃棄物を素掘りの穴に埋める「安定型最終処分場」の環境への影響が問題になっている。法制度上は安全な産廃だけを埋めるはずなのに、各地で汚染が起き、建設差し止めを認める最高裁決定も今年相次いだ。環境省は25日、検討会を作って対策を議論するが「廃止は考えていない」と、見直しも小幅になる見通しだ。「安定型」の現状と課題を報告する。

◆各地で相次ぎ問題に

 安定型の特徴は素掘り処分だ。本当に安全な廃棄物だけなら、安価で合理的な方法と言える。一方、有害物質が混入すれば、周囲への影響を防げない。

 滋賀県栗東(りっとう)市の安定型処分場は80年に埋め立てを開始。99年、周辺の排水管から高濃度の硫化水素が噴出し悪臭を放った。県の調査では、場内を通った水(浸出水)から国の基準を上回る鉛やカドミウム、ダイオキシン類が検出された。埋めてはいけない廃油や焼却灰が入ったドラム缶約250本も地中から見つかった。県は01年、業者に改善命令を出したが業者は破産。根本対策は取られていない。

 今月上旬、金網で囲まれた処分場に入った。十数本のドラム缶が地面に放置され、腐食した部分から黒い液体が漏れている。薬びんや点滴液のプラスチック容器が無数に転がる。

 処分場の隣で園芸店を営む青木安司さん(78)は「地下水は汚染され、ドラム缶も有害物質もまだ埋まっている。取り除いてほしい」と訴える。

 宮城県村田町や三重県四日市市などでも同様の環境汚染が問題になっている。

◆最高裁「差し止めを」

 汚染が発生した安定型処分場では、有害な廃棄物が「安定5品目」に混じっていた。違法な混入を防ぐため国は廃棄物処理法の省令を改正し、98年6月から処分場業者に対して、産廃を受け入れる際に地面に広げて内容を調べる「展開検査」を義務づけた。だが、それでも混入は続く。

 長崎県大村市の安定型処分場は98年9月に埋め立てを始めた。しかし01年と06年、県の検査で浸出水が処分場の水質基準を超えた。地元選出の山田正彦衆院議員(民主)は06年12月に国会で「(安定5品目以外の)布や紙、布団などを埋めているのを見た」と指摘した。県は今年7月、業者に改善命令を出したが、履行期限の10月1日を過ぎても改善は確認できていない。

 大阪府泉大津市の「泉大津沖処分場」は、大阪府や大阪市などが共同運営する。海面を埋め立てるため、ダンプカーが次々と、廃棄物を運んでくる。荷台からばらまかれた産廃の中身を、係員2人が1台当たり数分かけて検査する。

 だが埋め立て場には、安定5品目外の木くずが無数に転がる。処分場責任者の佐嶋博・泉大津事業所長は「厳しく検査をしているが混入をすべて防ぐのは難しい」と明かす。小さな有害ゴミは、そのまま埋めてしまうという。

 産廃を持ち込む側はどう見ているのか。近畿地方のある解体業者は「泉大津は厳しい方。民間の処分場業者が、全ダンプカーを検査するのは物理的に難しい。何でも受け入れる処分場もある」と打ち明けた。

 展開検査の実効性は裁判でも疑問視された。水戸市の住民が安定型処分場の建設差し止めを求めた訴訟で、05年7月の水戸地裁判決は「(検査をする)処分場業者は(代金を払って産廃を運び込む側と)経済的な依存関係にあり(検査の)実効性は疑問視せざるを得ない」と指摘、建設を禁じた。今年5月にはこの判決を支持する最高裁決定も出た。

 日本弁護士連合会の調査では、安定型処分場の建設差し止めなどを認める判決や決定は92年から05年までに17件。多くが水戸地裁判決同様、展開検査などの実効性を認めなかった。日弁連は昨年9月、安定型処分場制度の廃止を求めて環境省に意見書を出した。

◆5品目自体も「危険」

 「安定5品目」自体にも環境汚染の危険が指摘されている。国立環境研究所の94年の報告書によると、安定型処分場の浸出水から環境ホルモン(内分泌かく乱物質)と疑われてきた化学物質「フタル酸化合物」が検出された。プラスチックの添加剤が溶け出したとみられ「将来的にはプラスチックを安定型処分場に埋め立てるのは見直すことが望ましい」と指摘した。

 関口鉄夫・元長野大講師(環境科学)は約15年前、雨水にさらされる地中にプラスチックを3カ月間埋めて実験した。浸出した水から、環境基準を上回る鉛や、ベンゼンなどの有機溶剤が検出された。

 処分場の設置許可は都道府県が出す。滋賀県は、安定5品目の中でも金属くずは投棄を認めない方針で、処分場業者には残り4品目に限った許可申請を指導している。県の担当者は「以前からの慣習。腐食した場合の汚染を恐れるからではないか」と説明する。

 処分場問題に詳しく、理学博士(生化学)でもある梶山正三弁護士(横浜弁護士会)は「純粋な安定5品目など存在しない。添加剤が重量の50%以上を占めるプラスチックもあり、化学物質の固まりを素掘りの穴に捨てるようなもの。金属も必ず腐食する。リスクは無視できず、安定型処分場は廃止すべきだ」と話す。

出典:毎日新聞


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