産業廃棄物:安定型最終処分場の検討委報告書/下 廃プラ除外は先送り
2009/11/30
環境省
「薬品が残った医療廃棄物を埋めた」「廃油のかかった廃プラスチックを埋めた」--。滋賀県栗東(りっとう)市の「安定型最終処分場」では浸出水からカドミウムやダイオキシン類などの有害物質が検出され、深刻な環境汚染が約10年前から問題化している。
同県は先月、処分場業者の従業員に事情聴取した結果の概要を地元自治会に公表した。そこには安定型で禁止されている有害物質を埋め立てた「告白」が並んでいた。解決のための根本対策には数十億~数百億円かかるが、業者は破産し、未着手のままだ。
安定型は遮水シートや浸出水の浄化処理施設がなく、有害物質が大量に混入すれば汚染拡散を避けられない。それだけに事前規制がより重要になる。
安定型の汚染対策強化策の報告書をまとめた環境省の検討委員会は、安定型5品目のうち、廃プラスチック類が妥当かどうかについても検討した。
廃プラは、有害物質が付着しやすく、環境ホルモン(内分泌かく乱物質)と疑われる化学物質も含まれるため、安定型品目からの除外を求める意見が多かったからだ。だが検討委は「除外すれば産廃の処理費用が上がり、不法投棄が増えるおそれがある」として、廃プラの除外は「今後の検討課題」にとどめた。
廃プラはリサイクルしやすいが、06年度に排出された廃プラ約610万トンのうち、約30%の約182万トンが最終処分されている。コストの問題でがれき類などに比べてリサイクルが進んでおらず、安定型での処分に依存しているのが実情だ。
元長野県廃棄物処理施設検討委員の関口鉄夫さん(元長野大講師)は「プラスチックは成分の5~40%が添加物で化学物質の塊だが、メーカーは中身を情報公開していない。疑わしきは予防すべきで、安定型に埋め立てるべきではない」と指摘する。
環境省検討委の座長を務めた国立環境研究所の井上雄三・特別客員研究員は「報告書の内容が、司法判断や住民の感情とずれがあるのは認める。
だが、コストのかからない処分場も考えなければならない。汚染問題を起こしている処分場はごく一部だ」と理解を求めている。
出典:毎日新聞社