環境省、災害廃棄物の対策促進 PCB使用機器を適正処理
2011/04/04
環境省
環境省が、東日本大震災に伴い発生した「災害廃棄物」の適正処理に向けた対策を相次ぎ打ち出した。
被災地のがれきに有害物質のポリ塩化ビフェニール(PCB)を使った電気機器が混じるリスクを想定し自治体側に注意と住民らへの周知を呼び掛ける一方、被災したパソコンや自動車がスムーズに処理されるよう指針を作成した。関連メーカーや業界団体とも連携して円滑処理を促す考えだ。
◆飛散や流出懸念
「大規模な津波でPCB使用機器が流された可能性まで考慮して、先手を打っていきたい」(産業廃棄物課)
環境省は、PCBを含むトランス(変圧器)やコンデンサーなどの電気機器の廃棄物が混じっている恐れがあるとして、被災自治体にPCB廃棄物の保管状況などの実態把握に努めるよう通知した。
PCB使用の恐れがある機器で破損や液漏れがある場合は、素手で触らずビニールシートで覆うなどして周辺への飛散や流出を防ぐ。その上で、県などの廃棄物担当課に連絡するよう求めている。
これに加え、3月25日には「災害PCB廃棄物の措置に関する検討チーム」を立ち上げた。大学の専門家のほか、日本電機工業会や産業廃棄物処理振興財団、日本経団連の関係者らが参加した。検討チームは今後、各自治体の調査結果を踏まえながら、PCB廃棄物を安全に輸送し保管する方策などについて多面的な議論を進める。
PCBが使われている可能性があるのは1974年までに製造された機器で、機種名や製造番号などから使用の有無を割り出す必要がある。電柱の上に取り付けた変圧器は、製造時期に関係なくPCBを使っていない。
PCB廃棄物を保管する事業者は「適正処理推進特別措置法」に基づいて保管状況などを自治体に届け出ることが義務付けられている。PCB廃棄物として保管された高圧コンデンサーの量は、2008年3月末時点で26万7800台。変圧器は3万3887台に達する。
このうちの一部ががれきに混じっている可能性があるが、被災地域によってはPCB廃棄物の追跡が手間取りそうだ。津波の影響で多様なごみが混在しているため、廃棄物の種類を特定しにくいためだ。
◆パソコンや車も
PCB廃棄物だけでなく、環境省は経済産業省などと連携し、被災したパソコンや自動車の円滑処理を促す指針も作成した。集めた廃棄物から分別が可能なパソコンの場合、自治体がリサイクルの是非を決め、判断が難しい場合はパソコンメーカーの助言を受ける。リサイクルが見込める際は「パソコン3R推進協会」の指定業者が自治体の保管場所に引き取りに出向き、同協会が再資源化する。
被災自動車の処理指針では、海水をかぶった車両を扱う際のバッテリー発火事故に配慮するといった安全対策や所有者を探す努力などを求めている。
がれき全体の撤去についても政府は、被災地で市町村が行うがれき撤去費用を全額国費で負担することを決め、11年度補正予算で対応する方針だ。
ただ、震災による廃棄物の発生量は膨大だ。政府の推計によると、倒壊した建物などのがれきの量は現段階で2000万トンを超え、阪神大震災の1400万トンを上回る。このため、一時保管の場所や処理場が足りなくなる恐れがあり、「県境を越える広域的な受け皿の確保が大きな課題」(廃棄物対策課)となりつつある。
政府は港湾周辺の埋め立て予定地や農地などの活用に加え、周辺自治体の受け入れも探る方針だが、難しいかじ取りが続きそうだ。
出典:SankeiBiz