東日本大震災 災害廃棄物/復興は早期撤去から始まる
2011/04/04
環境省
粉々に砕けた家屋、鉄筋だけを残して崩落したビル、巨大な燃料タンクは横転して無残な姿をさらす。
地震や津波で発生したがれきなどの災害廃棄物が復旧の妨げとなっている。被災の爪痕がいつまでも眼前に広がっていては、復興への意欲もなえよう。
膨大な量の廃棄物を撤去、処理するには周到な計画と自治体間の連携が欠かせない。県を中心に対策に万全を期してほしい。
宮城県の推計によると倒壊、流出した家屋のがれきや家電製品などの総量は約1800万トンに上る。阪神大震災で生じた約1400万トンを上回る可能性がある。岩手、福島両県を加えれば、途方もない量となるのは間違いない。
国の対応は素早かった。廃棄物処理法は災害に伴うがれきなどの収集、運搬、埋め立てを市町村が実施するよう定めているが、県の代行処理を認めた。役場の機能がまひしている基礎自治体も多く、妥当な判断だ。
撤去費用も重くのし掛かる。通常の国庫補助率は50%、阪神大震災時に最大97.5%へ引き上げられたが、今回は補助率を引き上げた上、自治体負担分の全額を地方交付税で賄う。財政力の弱い小規模自治体が数多く被災している。国の全額負担は朗報だ。
宮城県は1年以内の撤去、おおむね3年以内の処理を目指すとしている。
がれきは市町村ごとに数カ所配置する1次仮置き場にいったん集約。その後、県内数カ所に開設する大規模な2次仮置き場に運搬して中間処理し、最終的にはリサイクルに回したり、最終処分場に投入したりする。
宮城県内で1年間に排出される一般廃棄物の23年分の処理が待ち受ける。最大の課題が最終処分場の確保になることは容易に想像がつく。
県内で自己完結することはおそらく不可能で、今のうちから広域処分の枠組みを整備しておくべきだ。
阪神大震災では、大阪湾フェニックス計画で海面に造成していた広域処分場が受け入れ地として威力を発揮した。内陸の処分地は現在でも限られている。苦渋の選択となるが、海面の埋め立ても選択肢の一つとなるかもしれない。
仮置き場ではコンクリート、木くず、鉄くず―といった具合に分別を徹底しなければならない。東日本大震災では木造家屋が数多く倒壊しており、木くずの焼却量も膨大になる。他県の自治体に引き受けてもらうことが検討課題になる。
環境対策も怠りなく講じる必要がある。撤去に当たる作業員や市民を粉じんから守るのはもちろんのこと、アスベスト(石綿)の飛散防止やポリ塩化ビフェニール(PCB)を含む小型コンデンサーの取り扱いにも細心の注意を払わなければならない。
がれきの山との闘いは長期にわたることになる。阪神大震災では関係自治体や警察、自衛隊などで構成する「災害廃棄物処理推進協議会」が調整の場となった。
国、県は全体の処理スキームを一日も早く策定してほしい。繰り返すが、早期撤去が復興のスタートラインだ。
出典:河北新報社