循環税たまるばかり/北海道
2010/05/11
環境省
■道独自に産廃抑制とリサイクル促進
産業廃棄物を抑制しようと、道が創設した独自の税金「道循環資源利用促進税(循環税)」に絡んだ基金が10億円を超え、その使い道が宙に浮いている。長引く景気低迷で徴収した税の使途が広がらず、税収過多の状態が続いている。当初の見通しが外れた形となった道は、「経済界と話し合って有効利用の方向性を検討したい」とし、税の廃止を含め考えるという。
■不景気で使途伸びず 廃止しても10億円宙に
「事業費の活用が伸び悩んでいる理由を、どう分析しているのか」。3月の道議会予算特別委員会。議員から循環税をめぐり、問われた道側は「景気の低迷をうけ、事業者が設備投資を控えた」と説明。今後についても「関係団体を通じた周知をし、貴重な財源を有効に活用するための検討を進めたい」と答えるにとどまった。
循環税は、産廃の排出抑制とリサイクルの促進を目的とする道独自の課税として、2006年10月に導入された。
業者が産廃を最終処分場に搬入する際、1トンあたり千円を税金として徴収。税収は補助事業として、リサイクル工場新設時の助成や、リサイクル産業創出・技術研究開発などにあてられ、事業者に還元される仕組みだ。
税導入後、最終処分場に搬入される産廃の量は年々減り、08年度は04年度の半分の約63万トンと、一定の成果は出ている。
しかし当初、年間約10億円だった税収見通しは、06年度が約1億円。翌07年度は5億3千万円に増えたが、08年~09年度は約7億4千万円と見通しを下回る。
道によると、税導入前の産廃埋め立て量をもとに税収を積算したが、導入後に埋め立て量が減り、見通しを下回った可能性があるという。
また、それ以上に道を悩ませているのは、この税を使った事業費が伸びないことだ。07年度の約3億5千万円が最高で、08年度は約2億円、09年度もほぼ同額という。
道循環型社会推進課の担当者は「景気低迷で設備投資が行われていない」と説明する。特に、リサイクル工場新設などへの補助額が最大1億円の「施設設備整備費補助事業」の利用が落ち込む。08~09年度の補助額は最大3千万~4千万円程度で、数百万円の小規模事業が目立つという。
道は、税導入から5年を迎える来年秋までに、税を負担し、事業を利用している経済界の意見を聴いたうえで、税の廃止を含めた検討をする予定だ。しかし、仮に循環税が廃止されても、この基金は「法定外目的税」のため、決められた使途以外に使うことはできない。
基金がたまる一方の状況について、神奈川大学経営学部の青木宗明教授(財政学、地方財政論)は「違法とか、同意した総務省がおかしいとは言えないが、わざわざ税をつくって、使い道がないのは明らかにおかしい。全国的にもここまでいい加減な例はあまりない」と指摘。さらに「税制度をつくる条例を審査した道議会にも責任があるのではないか」と話している。
出典:asahi.com