廃船リサイクルに商機 八戸周辺、事業化研究会に60社
2011/02/21
環境省
老朽化した大型廃船を解体処理して鉄などを再資源化する「シップリサイクル」を事業化しようと、八戸市など三八上北地域の事業者らが、「八戸・むつ小川原港シップリサイクル研究会」(世話人=椚原光昭・北日本海事興業会長)を発足させた。
漁船の解体や有害物質の除去などに携わっている企業が、新たなビジネスチャンスとして廃船リサイクルの産業化を目指す。
船舶の寿命は20~30年とされる。解体にかかる人件費やリサイクルされる鉄の需要によって、解体の拠点となる国は移動してきた。1980年代は国内や韓国、台湾が、90年代以降はバングラデシュやインド、中国、パキスタンが、主に担うようになった。
しかし、労働コストの安い国では、作業時の安全が不十分で多数の死者が出たり、廃油で海洋が汚染されたりなどの問題が指摘されるようになった。国際海事機関(IMO)は、環境汚染と労働災害の防止を目指す「シップリサイクル条約」を2009年5月に採択、13年ごろには発効すると見られる。早期批准を目指す日本も、環境に負荷をかけない解体場所の確保に迫られている。
同研究会の椚原世話人によると、八戸市など県内の太平洋岸には船舶関係のリサイクル業者が立地している。椚原さんは小型漁船を解体する企業の相談にも乗っており、八戸周辺は新たなシップリサイクルの適地と見られている。
北海道・室蘭市では昨年、国交省のモデル事業として自動車専用運搬船(1万2251トン)を解体する実験が行われた。実験を指導した室蘭工業大学の清水一道准教授の話を参考に、八戸市などのシップリサイクル関係者は、地元での事業化に向けて準備を進めてきた。
今月8日に設立された研究会は、室蘭市、大分県に続いて全国で3番目。発足式には、造船、港湾、鉄鋼関係のほか、銀行などの企業64社と国交省、県、八戸市などの行政関係者が集まった。
海事コンサルタント業「日本海洋科学(川崎市)」の仲條靖男計画部長は「環境に配慮しながら安全に解体作業できることをアピールすれば、ビジネスチャンスが広がる可能性がある」とはっぱをかけた。
解体場所の候補は六ケ所村のむつ小川原港が有力。今後は事業の具体的な可能性について検討していくという。
出典:asahi.com