プラスチックごみに危険物
2011/01/14
環境省
異物混入ごみ袋職員が中身確認調布市
八王子市がプラスチックの無料回収を始めてから、3か月が過ぎた。ごみの資源化率を上げるのが狙いだが、集合住宅のプラ専用のコンテナで、在宅医療で使用したとみられる針付きの注射器やカミソリといった危険物の混入が目立つ。
同市では原則、家庭ごみの収集を有料にしており、ごみ処理費を浮かせるためではないかと市は推測している。分別作業をしている人からは、けがや感染症を懸念する声が上がる。専門家は「リサイクルを推進しようという趣旨はいいが、もっと工夫する余地がある」と指摘している。
八王子市では2004年から、可燃・不燃ごみの収集を有料化した。専用のごみ袋を90~750円(5~40リットル、10枚セット)で購入する方法だ。だが、不燃ごみの約6割がプラスチック類だったことから、昨年10月、「プラ」マークがついたプラスチック製品のみ、無料で回収することにした。
戸別回収が原則だが、マンションや都営住宅などでは、専用のコンテナにごみをためておくことが多いため、コンテナ内のごみを収集車に一斉に流し込んで回収している。
プラごみは「資源化センター」(戸吹町)に運ばれ、障害者の就労を支援しているNPO法人「八王子ワークセンター」の職員や障害者計56人の手で、リサイクルに適さないものが取り除かれる。
市によると、プラごみに交じっていた危険物は、昨年12月の1か月間で、注射器が約600本、カミソリや包丁、刃物など約15キロ分もあった。
作業員はゴム製の手袋をつけているが、針や刃物が混入していれば、けがや感染症の危険がある。作業している男性(27)は「割れたガラスが入っていることもある。作業が怖い」と話している。
市では、危険物が混入する理由について、「カミソリの柄や注射器などは一部にプラスチックとみられる素材が使われているので、出しやすいのではないか」と推測する。
広報やホームページで「包丁などは交ぜないで」と注意喚起しているが、その後も混入が続いており、市環境部は「具体的な有効策はなく、広報などで分別を訴えるしかない」と頭を抱える。
読売新聞八王子支局が多摩地区30市町村に聞いたところ、6市1町が可燃・不燃ごみを有料で、プラスチックは無償で回収している。
人口約22万人の調布市は04年、可燃・不燃ごみの収集を有料化したのに伴い、市民に徹底した分別をお願いしている。収集業者が一つひとつの袋を手作業で収集車に積み込み、分別されていないごみには警告シールを貼るとともに、分別していなかった集合住宅の情報を市ごみ対策課に報告。
市は管理組合や不動産会社などに連絡し、職員立ち会いの下で中身を確認して分別を徹底するよう呼びかけている。職員は、土日や夜でも分別指導に出向いているという。
また約6万人の福生市や約14万人の武蔵野市なども、回収作業員が一つ一つ手作業で収集車に積み込んでいる。異物の混入が疑われる場合には、注意を促すシールを貼るなどしている。
ただ、八王子市の人口は55万人を超えており、他の自治体と事情が異なる面もある。同市の担当者は「集合住宅で一つ一つ手作業で確認するのは効率が悪く出来ない」と漏らす。
ごみ行政に詳しい東洋大の山谷修作教授(環境政策)は背景として、ごみ袋の価格の高さを挙げる。全国的には1リットルあたり1円程度が多いというが、八王子は1・8円。「ごみ袋の料金について市民の理解が得られておらず、混入する人が出ているのでは」と指摘する。
その上で、集合住宅での異物混入をなくすには、捨てられたものが外からわかるように網を使用することを勧めている。また、資源化の過程を知って分別意識を高めてもらうため、作業場の見学会を何度も開くことを提案する。
出典:読売新聞