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「製鉄ごみ」で海の緑化、漁礁と沈め栄養補給効果期待

2010/08/27

環境省

 ■鉄鋼各社、藻場づくり活用へ実験

 鉄鋼各社が、製鉄の工程で出る副産物の鉄鋼スラグを、海藻が死滅する「磯焼け」の対策に生かそうと模索している。“鉄のごみ”で鉄分やミネラル不足を補って海の緑化を進め、魚介類の生息する藻場を増やしたり、生物多様性を確保したりする効果が期待されている。

 土木建築材料としての用途が中心だった鉄鋼スラグの新たな活用策として注目される。

 鉄鋼スラグは、鉄鉱石に含まれる鉄以外の成分などが石灰石と結合したもので、製鉄1トンの過程で約400キロが発生する。従来はセメント原料や道路の路盤材などに使われてきた。

 海洋環境の改善に役立つという研究結果が出ており、大手鉄鋼メーカーが実証実験に乗り出した。

 神戸製鋼所は5月、神戸空港の護岸から北約20メートル、水深約5メートルの海中に鉄鋼スラグなどを上面に載せた鋼鉄製の漁礁(縦3・1メートル、横4・4メートル、高さ2メートル)を沈め、3年かけて藻場再生の効果を調べる実験を始めた。海上空港として開発され、周辺が生物の生息場所になることを求められているためだ。

 2009年7月に漁礁を沈めた家島群島の西島(兵庫県姫路市)では半年程度で海藻が繁殖し、周辺で魚の回遊が確認できた。神鋼は「スラグに含まれた鉄分やカルシウムなどが溶けだし、海藻に栄養補給しているのではないか」とみる。

 日本の沿岸では、コンブやワカメなど海藻が減り、代わりにサンゴモという硬い殻のような海藻が海底を覆う「磯焼け」が深刻化し、魚の産卵場所が減って漁獲にも影響している。

 日本の海岸線約3万5000キロのうち約5000キロに及び、年約50キロずつ進んでいるとの調査もある。森林伐採など河川上流の開発で、山から海への鉄分供給が減ったことも要因の一つとされる。

 新日本製鉄も04年から鉄鋼スラグと腐植土を入れた袋や鉄製の箱を海中に沈める実験を、千葉や三重、京都、和歌山など全国約20か所で実施している。

 北海道増毛町では、海藻がゼロの状態から、1年目にコンブなどが1平方メートル当たり約2キロ、2年目に約36キロ生えた。因果関係は不明だが、ニシンの群れが戻ったという現象もあるという。海藻の成長は陸上の植物に比べ3~5倍早く、二酸化炭素の削減効果もあるとされる。

 新日鉄は「効果の度合いや持続期間にはばらつきもある」としており、今後、設置場所など条件ごとに検証を重ねることが課題になりそうだ。

出典:読売新聞

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