「生ごみ」リサイクル バイオ燃料への転換を模索
2009/02/20
環境省
50リットルのプラスチック製バケツをのぞき込むと、リンゴの皮にキャベツの芯(しん)といった調理屑(くず)や、ご飯、汁物の具などが詰まっていた。東京の江東区環境学習情報館「えこっくる江東」の仮設プラントに集められた給食残渣(さ)だ。廃棄物として処理していた給食残渣を使い、エタノールとメタンガスを生成する実証実験を昨年2月から、東京ガスと共同で行っている。
現在は区内の小中学校4校から生ごみの提供を受けている。1日約2300食分の給食から出る生ごみは150~300キロ。東京ガス広域圏企画部新エネルギー・環境プロジェクト室主幹の川瀬聖さんは「何が入っているか分からない残渣を使って、効率よくバイオ燃料に加工するための技術開発の一環として実証実験を提案した」と説明する。
エタノールを作る工程は酒造りと似ている。残渣中のデンプンを分解して得た糖分が、酵母による発酵でエタノールに変わる。残渣に含まれる油分やタンパク質を餌にできる別の微生物が、メタンガスを作る。
仮設プラントで作るエタノール溶液は、区内の小中学校で理科の実験用アルコールランプの燃料に使われる。エタノール濃度90%の完成品からは、残る10%の水分に溶け込んだ生ごみのにおいがするが、児童、生徒は燃料が給食残渣からできていることを知ったうえで教材として利用している。
一方のメタンガスは、施設内の発酵工程などで加温するための燃料に使われる。ただ、プラント全体の稼働を賄える量にはならない。川瀬さんは「処理量が100倍になれば、エタノールを販売しても、メタンガスだけでプラントを稼働させられる」と見積もる。
では、そんな施設ができたら、生ごみや食品残渣は無料でリサイクルできるのだろうか。「生ごみの回収費などを考えると、従来と同じか、少し高い処理費を負担してもらいたい。リサイクルにはコストがかかる」と川瀬さん。
江東区は来年度、東京ガスとともに、区内のオフィスビルから出る紙ごみを生ごみに加え、メタンガスを生成する実験に取り組む。
こうしたバイオ燃料へのリサイクルに挑む自治体の動きについて、石川県立大の高月紘教授(廃棄物工学)は「生ごみを堆肥(たいひ)や飼料にリサイクルしている自治体は、周辺に農畜産業があるからできる。輸送や貯蔵の問題も考えると都会での堆肥化は難しく、自治体はお金をかけてもバイオ燃料へリサイクルする仕組みを今は作る時期だと考えている」と分析している。
出典:産経新聞