<注目記事> 金属リサイクル業界は斜陽産業 銀行の目厳しく
2012/09/24
ニュース
19日、中国向け雑品輸出シッパーのエフ・イー・マテリアル(旧エフ・イー・メタル)が自己破産を申請した。
→(関連記事)(株)エフ・イー・マテリアル/自己破産申請 負債額33億円
業界の象徴的なシッパーの倒産で同業種(中国向けシッパー)の他シッパーにも倒産の噂がさざ波のように広がっている。いわく、どこの会社が危ない、明日にもつぶれそうだetc・・・・
確かにここ数年、特に09年以降中国向け輸出シッパーは厳しい市場環境にさいなまれ続けてきた。
中国人シッパーの台頭(千葉の佐倉市にはそういった中国系スクラップディーラーが集中してヤードを開いている通りがある)で日系シッパーの競争力は低下、しかし仕入はスクラップ発生減で高いものを強いられる。常に薄利状態が続き赤字常態化となるのにそう時間はかからなかった。
この赤字仕入、赤字出荷は従前から存在し、それでも金属スクラップ業界は借金まみれでもなんとか経営を維持することができたのだが、昨今はそうもいかなくなってきた。
関東圏の非鉄金属専門商社は言う「銀行の目が非常に厳しくなってきた。東金属(首都圏の大手シュレッダー業者*現在はヤマダ電機傘下のリサイクル工場)の倒産がひとつのきっかけとなり、銀行が金属スクラップリサイクル業界を見る目が変わってきた。2000年~2008年までは資源ブーム、リサイクルブームで銀行は極端にいうとリサイクル業であればその会社の実力以上にお金を貸していたが、今はもう正反対で、ハナから信用していない。よほど内容が良くないと貸さない」。
つまり、これまではそこそこ物量が見込まれたこと、銀行融資という(輸血)があったことで金属リサイクル業界はあのリーマンショック時でもつぶれるところはほとんどなかった。今は往時をしのぐ、かつてない危機に直面している業界だが、最大の問題はもはや輸血(銀行融資)が効かなくなったこと、動脈産業(製造業)の衰退で伴って静脈産業(環境。リサイクル業)も衰退していることで、銀行からみればかつての将来性のある業界からハイリスクな業界という認識に変わってしまっている。
倒産予備軍多数控える
鉄、非鉄、特殊金属にかかわらず金属スクラップ業界はすべてスクランブル状態。なかでも鉄スクラップ業界、中国向け雑品業界はズバリ言うとドミノ倒しのように倒産および自主的な廃業が急増すると予想される。
鉄スクラップ業界はそれなりに大型の設備をもち、従業員も多く抱えている。固定費を賄うためにはスクラップを多く扱うことが必須で、少ない発生のなか、「高値」で仕入れて物量を稼ぐ。しかし当の鉄鋼メーカーじたいも細ってきているため、また鉄スクラップ相場も昨年のキロ40円台から今は20円台。他、非鉄も相場水準は昨年から2割~3割低下している。
無理してモノを集めても、売り値はたいして上がらない現況は赤字の拡大となり、倒産への近道になる。
これが今のリサイクル業界の現実である。かつては赤字仕入でも「何とかなった」しかし今は「何ともならない」市場である。
非鉄金属では銅、真鍮、アルミなど専業の問屋(ディーラー)が多く存在するが、この専業業界は鉄業界以上に厳しい。彼らは一般的に、ものの流れとして産廃、鉄スクラップ問屋からアルミ、銅などを仕入れてきた。多くの専業はある程度「仕上がった原料」として鉄、産廃業から銅、アルミスクラップを買う。減容、不純物の除去などある程度の前処理を施した原料を買う(ゆえに銅原料業界のなかにはしばしばスクラップ問屋ではなく、原料問屋である、と上から目線のスタンスをとっている問屋も少なくない。このような問屋の多くはすでに斜陽化している)。
メーカー直納問屋であるがゆえに仕上がった原料を買えるだけの「売り値」をもっていたのだが、この伝統的な秩序は10年前からすでに崩れつつあり、アルミでは特に完全崩壊している。例えば鉄スクラップ問屋はアルミ専業を通さずに直接アルミ合金メーカーなどに販売する。合金メーカーじたいがどこからでも購入するため、専業を通すメリットはない。
「アルミスクラップ業界は物が減った、とよく言うが、減っているのは減っているが、それ以上に流通の変化が大きい」と非鉄商社は語る。
物流秩序の変化、価格低下、需要減退、発生減退と国内の構造的な変化縮小に伴っての銀行の厳しい視線。
金属スクラップ業界は文字通りDEAD OR ALIVE(生きるか死ぬか)の究極の選択を迫られている。
出典:銅相場情報サイト