無料回収は合法? 金沢の空き地、テレビ山積み
2011/05/16
環境省
金沢市内の空き地で、テレビなど家電が山積みになっているのを目にした。
ざっと数百 台はあろうか。家電リサイクル法の施行で家電4品目(テレビ、エアコン、冷蔵庫・冷凍 庫、洗濯機)の廃棄が有料になってから10年。7月の地上デジタル放送移行でブラウン 管のテレビがいらなくなるとはいえ、これって不法投棄では?石川県の担当者に聞くと「 実は違法とは言えないんです」という答えが返ってきた。
使い古したテレビなど家電4品目がずらりと並んでいるのは、金沢市藤江北2丁目の金 石街道沿い。「無料回収」と記された黄色いのぼり旗が立っている。家電リサイクル法で はリサイクル料がかかるから、みんなが置いていくのもうなずける。
この無料回収が合法なのか違法なのか、県廃棄物対策課専門員の諸治(もろじ)信行さ んに聞いてみた。諸治さんは「家電が『価値のないもの』か『価値のあるもの』かにより ますね」と言う。
家電リサイクル法では、不要になった家電を「価値のないもの」と見なし、市民は廃棄 物をリサイクルする費用を負担しなければならない。回収には自治体から収集運搬、処理 の許可をもらう必要があり、無許可だと廃棄物処理法に違反するのだという。
一方、不要家電を「価値のあるもの」と見なせば、回収は自由。いわば、捨てたり売っ たりするのではなく、譲渡するのと同じ理屈なのだという。ただし、有料で回収、転売す る場合は古物営業法に基づく許可がいる。空き地で家電を無料回収している人たちは、「 価値のあるもの」と見ているということか。
空き地に戻ると、黒い作業服姿の男性が黙々と家電を回収していた。この男性は「FR EE(フリー) SPACE(スペース)」(同市)の従業員。話を聞くと、引き取った 家電は修理した上で中国や東南アジアのバイヤーに販売するのだという。ナイジェリアか らわざわざ買いに来る黒人男性もいるそうだ。
男性いわく、無料回収業者が全国的に増え始めたのは、地デジ完全移行に向けてテレビ の買い替えが本格化した昨年から。県によると、県内のテレビのリサイクル台数は5万台 前後で推移してきたが、2009(平成21)年は10万1547台に倍増し、集計中の 10年も10万台を大きく上回るのは確実だという。
空き地にいると、金沢市内の無職男性(66)が、使わなくなったブラウン管テレビ3 台を車で運んできた。家電リサイクル法について尋ねてみると「知っとるよ。テレビ3台 やと1万円ほど掛かる。無料回収はありがたいわね」と話した。気持ちは分かる。
県としても、不法投棄が増えるよりは助かるのではないか。諸治さんは困惑した様子で 「家電リサイクル法でメーカー側はリサイクルを前提に商品開発を進めており、本来はリ サイクル料を払って適切に処分してほしい」と話した。自分の財布の中身を見ると、どう すればいいか迷ってしまう…。
出典:北国新聞