泥炭使い家庭で生ゴミを堆肥に…札幌で社会実験
2010/05/11
環境省
札幌市は、北海道内に広く分布する泥炭を使い、家庭から出る生ゴミを堆肥(たいひ)にする大規模な社会実験に乗り出す。
対象は全89万世帯のうちの1万世帯。泥炭は生ゴミを分解する微生物が好む通気性と保水性に富み、同市は「泥炭は近郊に豊富にあり調達しやすい。実験が成功すれば、ゴミの減量化を一気に進めることができる」と意気込む。
同市は昨年7月から家庭ゴミを有料化し、焼却処理していたプラスチック類や紙ゴミの資源回収を開始した結果、今年度の可燃ゴミは2008年度に比べて10万トン減の約47万トンと見込まれる。しかし、生ゴミは減量化が進まず、可燃ゴミの約半分を占めている。
生ゴミの堆肥化は全国で取り組まれているが、屋外に設置するコンポスターだと、1年の半分が雪で覆われる札幌では凍ってしまい、堆肥化が進まないという問題があった。
そのため、市内では10年前から室内で堆肥化する、手軽な段ボール式の研究が進められてきた。厚手の段ボール箱に乾燥させた泥炭と炭化させたもみ殻(もみ殻くん炭)を混ぜて敷き、生ごみを入れて1日1回よく混ぜる。微生物が、泥炭の炭素と生ゴミの窒素をエサに活発に働いて生ゴミを分解し、ミミズや虫の発生も少ないことが分かった。
10年前から泥炭を使った堆肥づくりをしている同市北区の主婦佐藤順子さん(56)は「1箱で3か月分にあたる30~40キロの生ゴミを処理でき、魚の骨も細かく砕けば大丈夫。生ゴミを出さないよう、無駄な買い物や作り過ぎをしなくなりました」と語る。
研究結果を受け、同市は6月頃から市内40か所以上、計1万世帯を対象にセミナーを開き、受講者に乾燥泥炭ともみ殻くん炭を無料で配り、削減効果や課題などを報告してもらう。結果を見ながら、対象世帯を増やせるか検証する。
同市内で出される生ゴミの3割が食べ残しや消費期限切れ食品で、市環境局は「食生活の見直しにつながるなど目に見えない効果もあるはず」と期待している。
◆泥炭=枯れたコケなどの植物が、数千年単位で堆積(たいせき)し、十分に分解されないまま炭化した層。乾燥させたものが土壌改良材や、ウイスキーを醸造する際に麦芽をいぶす燃料などに使われている。国内では釧路湿原や石狩泥炭地などに広く分布する。
出典:読売新聞