異臭騒ぎ原因は劇物農薬 木曽町のごみ処理施設
2009/12/29
ニュース
木曽町のごみ処理施設「木曽広域連合北部クリーンセンター」で11月17日、不燃ごみの破砕処理をしていた処分場の職員らが催涙症状などを訴え、病院に運ばれた異臭騒ぎ。県警科学捜査研究所(科捜研)の調べで、原因物質は農薬の「クロルピクリン」とみられると発表された。
この農薬はいったい何ものなのか。処理方法などを含め、調べてみた。
同センターによると、異臭は不燃物用ごみ袋に入った栄養ドリンクほどの大きさのビンから発生。破砕処理をしていた職員7人が袋を開けた瞬間、刺激臭がして涙が出たという。駆けつけた警察官2人も目に痛みを訴え、搬送されたが、その日のうちに帰宅する軽症だった。
異臭の原因とみられるクロルピクリンは、毒劇物取締法で劇物に指定される。別名・トリクロロニトロメタン。無色透明の液体で気化しやすく、催涙性のある刺激臭を伴う。長期間保存しても変質しにくく、引火性はない。毒性が強く、散布するときは防毒マスクやゴーグルを装着する必要がある。
業界団体の「クロルピクリン工業会」は、「高濃度で吸引すると死に至る恐れがある。これまで死者が出たこともある」と危険性を指摘。2008年には、熊本県でクロルピクリンを飲み自殺を図った男性の吐しゃ物が原因で、搬送先の病院職員や患者50人以上が治療を受けた。
県内でも2000年、長野市内のごみ処理施設で職員4人が目や鼻に痛みを訴え、入院した例がある。
JA木曽によると、クロルピクリンは作物の連作障害を防ぐためによく使われてきたが、近年は安全性の高い代替品が流通しており、利用は減りつつあるという。
処理方法はどうなっているのか。同工業会によると、農家が事業活動で使用する農薬は、廃棄物処理法で産業廃棄物として扱われ、自家処分することが禁じられている。家庭菜園など事業以外の使用でも、農協や産廃業者に依頼して回収する方法が一般的という。
今回の事故を同センターでは「住民の不注意により発生した可能性が大きい」と考えており、農家などへの啓発を強化する方針。年度内に農薬の処理方法などを記載したビラを木曽郡内全戸に配布し、再発防止につなげたい考えだ。
村田広司所長(53)は「とにかく劇物を一般のごみと一緒に出さないことが大切。大きな事故につながることもあるので、注意してほしい」と呼び掛けている。
出典:中日新聞