巡礼道脇 廃品の山/秩父
2009/12/16
ニュース
巡拝者「札所泣く」 所有者「リサイクル品」 県指導改善なし
秩父市内の札所を巡る江戸巡礼古道★脇に、無粋な廃品の山が6年にわたって放置されている。「保管」するリサイクル業者は「ごみではない」という立場。県は1年前、廃品に廃棄物が混じっているなどとして、指導を始めたものの、改善の気配はなし。
10月には、ようやく整理・撤去を勧告したが、規模が小さいことなどから、古道に面していない1か所だけが対象となった。業者は「古道脇の保管場所を含めて来年3月までに整理する」としており、古道ファンらが注視している。
問題になっているのは、秩父市別所の古道沿いにある幅約10メートル、高さ約3メートルの廃品の山。プラスチックケースに入った缶や瓶、ひしゃげてさびついた自転車、冷蔵庫、サーフボードなどが雑然と積まれている。
23番札所・音楽寺から24番札所・法泉寺につながる幅1~2メートルほどの狭い道で、県の調査で初期の道筋とみられている。四季折々の表情を見せる武甲山(1304メートル)を眺めながら、のどかな田園風景を楽しめ、白装束をまとった巡礼者や、リュックを背負ったハイキング客が多く通る。古道巡りの経験がある狭山市の男性(66)が嘆く。「あれでは秩父の札所が泣く」
「所有者」は、地元のリサイクル業者の男性(61)。男性によると「取引先の倒産をきっかけに多額の負債を抱え、10人いた従業員を雇えなくなり、6年前からたまった」という。
住民からの苦情を受け、県が動き出したのは1年ほど前。男性は「ごみではなく、リサイクル品。やむを得ず廃棄物になる部分もある」との言い分で、県は、付近の2か所を含めて立ち入り調査を実施。廃棄物の撤去を求める行政指導も行ったが、「減っては、また増える状況が続いた」(県担当者)という。
県は10月、市や地元警察にも立ち会いを求めて男性を呼び、古道に面していない保管場所1か所について、分別・撤去を求める勧告を行った。古道脇を対象から外した理由について、県は「規模が小さく、住民から直接苦情がないため」と説明している。
男性は「巡礼道といっても、私の生活がある。体調を崩したこともあり、分別が遅れていた。別の所に移す資金もないが、3か所すべてを整理し、リサイクル品を整然と保管するなど、巡礼道の雰囲気にあった形にしたい」と話している。
古道を訪れた都内の大学3年の女子大生(21)は「ガイドブックを見て、きれいだなと思ってきた。観光化を目指しているなら、行政も配慮が必要では」と注文をつけていた。
★江戸巡礼古道 室町時代から続く「秩父札所めぐり」のための道で、江戸時代に完成したとされる道筋。地域住民が環境美化に努めており、ツツジや彼岸花などを道沿いや法泉寺境内に植える活動をしている。
出典:読売新聞