不法投棄ごみ、排出業者を突き止め提訴 大阪の男性
2009/10/05
ニュース
3年前に廃棄物処理法違反(不法投棄)などの罪で有罪判決を受けた解体業者が産廃をそのまま放置しているのは不当として、被害を受けた大阪府泉佐野市の貸倉庫業の男性(46)が、解体業者や廃棄物の排出業者らに約8千万円の損害賠償を求める本人訴訟を大阪地裁に起こした。
弁護士に依頼を断られ、府も十分な情報を公開してくれなかったが、自力で排出業者を突き止め、提訴に持ち込んだ。事件の心労で父親が死亡したといい、男性は「行政は土地所有者の自己責任というが、捨てた者が片づけるのは当然だ」と訴えている。
訴状によると、解体業者は平成18年5月、府警に摘発された。男性の父親が所有する倉庫に、有害物質の硫酸ピッチや廃タイヤなどを大量に持ち込んだとして、2人がそれぞれ懲役4年10月、2年8月の実刑判決を受け、服役している。
2人は16年5月、男性の父親に「使用済みタイヤのリサイクル工場として使いたい」とうそをつき、月額50万円で倉庫を借りた。しかし、廃タイヤや硫酸ピッチ、建築廃材、廃プラスチックを次々に倉庫内へ捨て、男性の父親が再三抗議しても撤去しなかったという。
府警は2人に処分を委託した建設業者やタイヤ業者も摘発し、原状回復するよう指導。硫酸ピッチは府が行政代執行で処分したが、一部のごみや汚泥約300立方メートルは排出業者が特定できず、3年たった今も倉庫に山積み状態になっている。
男性は排出業者を突き止めようと情報公開請求を重ねてきたが、個人情報のほとんどが黒塗りで公開。さらに府は土地所有者にも一定の責任があるとする府条例を盾に、暗に自己処理を求めたという。
それでも受刑中の2人と手紙をやりとりし、排出業者の一部を特定できた。ところが、訴訟にあたり廃棄物処理法に詳しい弁護士に相談したが、仮に勝訴しても賠償金を回収できそうにないなどの理由で断られた。
男性の父親は心労が原因とみられる高血圧で持病の胸部大動脈瘤(りゅう)を悪化させ、2年半以上に及ぶ闘病生活の末、今年4月に亡くなった。男性は「父が元気なうちに撤去させたかった。不法投棄で泣き寝入りする土地所有者は多いと思うが、被害者が犠牲を強いられることには納得いかない」と徹底抗戦する構えだ。
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不法投棄されたごみ処理の責務を土地所有者にも負わせる大阪府条例は、措置命令に従わなければ3カ月以下の禁固または20万円の罰金が科せられるとの罰則を設けている。府によると、これまで命令に至った例はないが、平成15年の条例制定時には「善意の第三者が巻き込まれるおそれがある」と異論が出たという。
捨てられた側の「自己責任」を求める条例は珍しくなく、長野県は条例に沿ったマニュアルを作り、土地所有者に立て看板の設置や業者の行政処分歴の確認なども勧めている。
環境省は、土地所有者が相場に比べて高い賃料を受け取っている場合や撤去を求めたか否かなどで、不法投棄される認識の有無を判断するよう各自治体に求めている。担当者は「事例によるが、放置し続けることで周辺環境に影響を及ぼすなら、土地所有者への対応は必要」と話している。
出典:産経ニュース