古紙持ち去り、11区が罰則、文京など今月導入、価格急落も被害減らず。
2009/04/03
環境省
ごみ集積所に出された古紙など資源の持ち去りを防ごうと、持ち去った業者に罰則を科す自治体が東京都内で増えている。二十三区では四月から文京区など四区が罰金、中央区が氏名公表を導入した。すでに条例を改正済みで今後施行する区を含めると、合計十一区が罰則を設ける。景気後退で古紙価格は急落しているが、持ち去りは減っていないため、今後も罰則導入の動きが広がりそうだ。
四月に罰金を導入したのは文京、大田、豊島、葛飾の四区。いずれも違反業者に二十万円以下の罰金を科す。持ち去りを発見したら業者に警告し、禁止命令を出す。違反行為を繰り返した場合に刑事告発する。杉並区、練馬区でも今年に入ってすでに条例改正案が可決されており、今後施行する。港区と足立区も導入を目指している。
罰則を導入するのは、各自治体が回収した古紙をリサイクル業者に売却しており、持ち去られると収入が減るためだ。リサイクルに協力している住民から苦情が多いことも背景にある。罰金は世田谷区が二〇〇三年にいち早く始めたが、〇八年七月に最高裁で条例違反に問われた業者の罰金刑が確定したことが追い風になった。
罰金の導入が相次ぐなか、品川区は五万円以下の過料を科すことで対応している。罰金は警察に告発してから裁判の判決が確定するまで時間がかかるためだ。過料は行政処分なので、区の判断で迅速に対処できる。
同じ理由で目黒、中央区は違反業者の氏名公表を採用した。禁止命令を出しても従わない業者の企業名や代表者名を区報やホームページに掲載する。目黒区は二月に初めて違反業者を一人公表した。
世界的な景気後退を背景に中国での古紙需要が減少し、買い取り価格が下落しているが、持ち去り被害は後を絶たない。東京地区で古紙問屋が回収業者から古新聞を買い取る価格は三月で一キロ当たり約七円と、高値だった三カ月前の半値以下になった。だが大田区では「見回りをすると一日十件は持ち去り現場に遭遇する」といい、被害は減っていない。
価格がさらに下がれば一時的に持ち去りが減る可能性はあるが、「安定的な資源回収の仕組みを維持するには罰則導入は有効」(文京区リサイクル清掃課)という
出典:日本経済新聞