【JX金属】リサイクル原料安定供給のためカナダ社買収|金額は100億規模
2022/08/11
ニュース
JX金属はカナダのイーサイクル・ソリューションズ社を8月2日付けで買収し、全株式を取得したと発表。
100億に及ぶ大規模の買収額と見られている。
世界トップクラスの銅生産能力を誇るJX金属は、電気自動車が世間に定着してきているのを背景に金属需要が高まっていることに、鉱石採掘量の減少を懸念している。
そのため、廃棄された電子機器や家電から銅や貴金属等を含む基板を取り出して再利用する事業を展開するイーサイクル・ソリューションズ社を買収に踏み切った。
機器から回収した金属の再利用に力を入れ、原料の調達を強化するのが狙いだ。
2021年12月期の売上高は約50億円となったイーサイクル社は、250人ほどの従業員が所属し、カナダに8カ所の拠点を構えている。
アメリカを含む北米地域で使用済みの家電や電子機器を収集して処理する事業を手掛けているため、現地で回収した廃棄された電子基板はJX金属が大分市で設立した佐賀関製錬所へと送られる予定だ。
運ばれた廃棄された電子基板から金属を取り出して再生し、販売する。
大分市の沿岸部には、2021年に新たな受け入れ施設がJX金属によって設立されている。
廃棄された電子基板の回収能力を拡大するためだ。
リサイクル原料の使用比率は銅製錬時だと現状で12%だが、2030年までには約25%に引き上げるプランで動いている。
それに伴い、イーサイクル社の廃棄電子基板の回収量も3倍近く増加させ、年間10,000tを目指す。
イーサイクル社はPCやタブレットなどの電子データを消去して適切に処分する事業も展開しており、今後スマートフォンの廃棄量が増えると見られている。
家電や電子機器などから摘出された電子基板は「都市鉱山」と呼ばれ、銅に加えてパラジウムといったレアメタル、金や銀などの貴金属を含有している。
PCは1t当たり100~500gの金が入っていると言われ、一般的な鉱石よりも高い含有率となっている。
また、鉱石由来と比較すると、調達や製造の際に排出する温暖化ガスを削減できると期待されている。
今後重要視されるのは、回収量の安定的確保だ。
ガソリン車から電気自動車に変わると使用量が数倍増える銅は、脱炭素社会で特に需要が高まる。
2050年までに需要と供給のバランスが崩れるという見方もあるほどだ。
この買収で電子機器の廃棄量が多い北米地域の回収に力を入れ、世界を視野に入れた回収の強化を狙う。
国連大学などによると、2030年には世界全体で7電子機器本体を含む廃棄物の総量が7,400万tにもなる見通しで、そうなれば2019年と比べると約40%増加することになる。
一方で2019年の収集やリサイクル率は17%にとどまった。
非鉄金属業界大手の三菱マテリアルなども国外からリサイクル原料の回収を強化するなど、激しい競争となりつつある。
差別化を図りたいJX金属は、銅鉱山開発などでも温暖化ガス排出削減を推進するビジョンを策定した。
急激に増加する銅需要に対応するにはリサイクル原料だけでは不十分なため、採掘や輸送時でもカーボンニュートラルの取り組みを同時進行させる。