【ペットボトルを1週間で分解】プラごみ問題を解決する分解酵素を発見
2022/06/29
ニュース
アメリカ最大の公立大学であるテキサス大学オースティン校の研究チームが、プラごみ問題を解決する新たな手法を開発したと発表した。
廃棄プラスチックによる環境汚染は大きな課題だ。
ほとんどのプラスチックは、微生物などの生物に分解される性質を持たない。
自然の中に長期間とどまり、海洋や土壌を汚染し続けている。
プラスチックごみ問題の解決には「リサイクル」が有用だ。
しかし世界でリサイクルされているプラスチックは全体の10%にも満たない現状がある。
今回の研究結果は『Nature』誌に2022年4月27日付で掲載された。
通常は分解に何百年もかかるプラスチックを、数時間〜数日で分解する酵素を作成したのだ。
新酵素は、天然のプラスチックを分解する酵素を元に作成している。
研究で対象としたPET(ポリエチレンテレフタレート)は、食品容器や飲料ペットボトル、フリース素材の衣類など、多くの製品に用いられているプラスチックの一種だ。
PETは、世界の固形廃棄物の12%を占めるとも言われている。
ロジカル的には、PETは酵素分解と再合成により他の製品に転換することができる。
しかし、PETを分解する酵素は、溶液中の水素イオン濃度(pH)や温度の変化に弱い。
そのため反応速度が遅く応用は進んでいなかった。
今回研究チームは、データ分析の基礎である機械学習モデルを利用して研究を進めた。
自然界に存在するバクテリアが生み出す、PET分解酵素の「PETase」。
時間をかけずに低温でPETを分解するため、「PETase」のどの部分に変化を加えれば良いかを予測。
そして、変異を加えた新たな酵素の変種を作製したのだ。
新酵素の名称は「FAST-PETase(functional, active, stable and tolerant PETase)」。
この新酵素は、30〜50℃以下でPETをモノマーまで分解することが可能だ。
「モノマー」とは高分子(ポリマー)を構成する低分子の単位のことで、単量体とも呼ばれる。
条件にもよるが、24時間程で完全にモノマーにまで分解できる。
新酵素では51種類のプラスチック容器に作用することができ、1週間でほぼ完全に分解することができる。
熱処理後の市販飲料水用ペットボトルに用いた場合、未処理のA-PET(透明度の高いプラスチック部分)を50℃で分解した。
また、新酵素の「FAST-PETase」で生成されたモノマーは、新たなPETに合成できる。
消費された製品を新たな資源に活用し、製品を生み出すリサイクルプロセスが可能であることも実証された結果となった。
研究チームは今後、新酵素の生産拡大と、産業への応用に備える予定だ。
また、廃プラスチック埋立地や廃棄物を多く出す産業での利用も検討されている。
環境修復への第一歩だ。