【フィンランド】ネステCEO ピーター・バナッカー氏「廃棄物を航空燃料に」
2021/01/12
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フィンランド・エスポーに本拠を置くエネルギー企業「ネステ」のCEO ピーター・バナッカー氏は、15年前、当時の経営陣は温暖化が近い将来、最大の危機の1つになると認識し、原油への依存を減らす変革に着手。社会へのエネルギー供給を維持するため、代替となる「再生可能燃料」を生み出すトップ企業になろうと決意。
▶ネステ:世界10カ国以上に拠点を持ち、石油精製や天然ガスの採掘、石油化学製品の生産、再生可能エネルギー事業、バイオ燃料事業などを展開している企業。
現在の営業利益の82%を再生可能な製品で賄う。時価総額が480億ユーロ(約6兆1千億円)。
世界中の人々が近い将来、原油需要がピークを迎えると考えている中、新型コロナウイルスの感染拡大を機にエネルギーの移行は想定より速くなっていることを踏まえ、同社では、フィンランドの2つの製油所の1つを閉じ、今後の投資の大部分は再生可能燃料と循環型製品の製造に回した。2025年には再生可能燃料の生産能力が約500万トンになり現状の2倍以上を目指す。
人口550万人のフィンランドに本社を置く同社が成功するには、石油由来のディーゼル油を100%代替できる再生可能ディーゼルの市場を作り、いまは化石燃料由来のケロシンを代替する航空燃料、石油化学に使う石油の代替原料に取り組むことが必須と考え、このような革新的な手段を選択するに至った。
再生可能ディーゼルや航空燃料は、食品廃棄物などから化石燃料と同じ成分の炭化水素を取り出して油にする。それで温暖化ガスの排出を8割減らせる。いずれも世界シェアは圧倒的な首位だ。航空機が飛ぶ上空1万メートルの気温は非常に低く、廃棄物から航空燃料を作るのはディーゼル油より難しいが、温暖化ガス削減に大きく貢献できるとしている。
電気自動車の市場拡大する中でも、毎日9億トンの化石燃料が輸送に使われる実態がありず、多くの国々では1台の自動車は12年以上使われるという。中古車や中古トラックも。出回っている車両には燃料の代替が必ず必要となる。
航空業界は新型コロナ前に年間3億4千万トンのケロシンを使用。航空業界はコロナで苦戦しているが、持続可能性への意欲は継続されている。20年10月から全日本空輸にも供給を開始している。
バナッカー氏は、炭素がなければ地球上に生命は存在しないとして、炭素をなくすべきだという意見には否定的である。ただし、新たに採掘するのではなく、廃棄物などから再生・循環させ、プラスチックを分子レベルでリサイクルし、化学原料を作るとしており、これらを生産する事業にも着手していく方針という。
また、企業のエネルギー変革には政府の役割も重要なため、意欲ある企業と正しい規制を設ける当局の協力が不可欠と考えていおり、欧州では規制が頻繁に変わらないとの信頼があるため、企業は長期の投資を実行できる。日本は50年のカーボンニュートラルに向け、21年、22年、30年に何を達成すべきか、そのためにどんな法制や規制を設定するか、注目していくとしている。