リニア新幹線:課題山積 建設廃棄物は東京ドーム50杯分
2014/10/18
ニュース
リニア中央新幹線は、全長286キロの86%がトンネルだ。南アルプスだけでも約25キロに及ぶ。掘削工事で生じる残土は推定で東京ドーム46杯分の約5680万立方メートル。汚泥やコンクリートも合わせた建設廃棄物は、ドーム50杯分の6380万立方メートルに達する。これだけの残土や廃棄物を適切に処分できるのかが建設プロジェクトの大きな課題だ。
JR東海はこれまでも搬送先や有効利用の方法を模索してきたが、全量を処分する見通しは立っていない。今年8月末には「処分対象の残土の8割は搬入先の候補地のめどがついた」と公表したが、処分先で環境への影響を新たに引き起こす懸念は拭えない。
水資源への影響も無視できない。トンネル工事で発生する湧き水が原因で地下水位の低下や河川流量の減少が起きる。静岡県の大井川上流は最大で毎秒2トンの流量の減少が予想されている。
工事用車両の通行や重機の稼働による大気汚染、騒音、振動は沿線住民の生活や景観に響く。工事計画によると、長野県大鹿村では残土の運搬のため村内唯一の幹線道路を1日最大1700台もの車両が通行する。路線の周辺に営巣するクマタカやオオタカなど希少な猛禽類(もうきんるい)への影響も心配される。
環境省は今年6月、JR東海が提出した環境影響評価書に対する意見書に「本事業の実施に伴う環境影響は枚挙にいとまがない」との厳しい文言を盛り込んだ。JR東海は8月に公表した最終版の評価書で「生活環境、自然環境などに対する影響をできる限り小さくする」と前向きな姿勢を示したが、その方策は明確には見えてこない。今後、沿線住民らへの説明会で、より具体的な対策を打ち出せるかが、工事の進捗(しんちょく)を左右しそうだ。
出典:毎日新聞