不法投棄衛星で監視 県と岩手大
2008/10/30
ニュース
全国初の試み
産業廃棄物の不法投棄をはるか宇宙から取り締まろうと、県と岩手大は、観測衛星「だいち」を活用した監視システムの運用を始めた。四国4県とほぼ同じ面積を持つ県土の隅々まで、厳しい監視の目を行き渡らせる全国初の試み。今年4月から半年間の監視活動で、新たな不法投棄は見つかっていないが、晴天時以外には鮮明な画像が撮れないなどの課題も残る。
監視システムは、陸域観測技術衛星「だいち」が送ってくる3種類の地形観測データを、時系列に従って比較することで、不法投棄のために穴を掘ったり、処分場の許可区域からはみ出してごみを捨てたりしていないかを解析する仕組み。
データは宇宙航空研究開発機構(JAXA)を通じて岩手大に提供される。最小で地表の2・5メートルの変化も見つけることができる。環境省も「画像の精度が良ければ、広い県土を持つ地域には効果的」(産業廃棄物課)と注目する。
データは、県や市町村の担当職員のほか、不法投棄対策にあたる警察官OBらの非常勤職員「産業廃棄物適正処理指導員(産廃Gメン)」も見ることができる。不審な場所があれば、現地に赴いて改善を指導する。悪質なケースは警察と連携して対処する。
これまでの半年間で、新たな不法投棄は見つかっていない。今後も監視を継続する一方、過去に不法投棄があった地形の分析も進め、不法投棄に狙われやすい地形を分析して公表するなど、予防にも役立てる。
課題もある。せっかく衛星が県の上空に来ても、曇りや雨の日は、雲が遮って地表を撮影できない。6月に発生した岩手・宮城内陸地震では、土砂崩れなどの被災状況の把握のため、「だいち」が活用されたため、監視が思うように進まなかった。
それでも、静岡県や大分県など他県からも問い合わせが寄せられ、注目度は高い。県資源循環推進課は「これまではヘリコプターや産廃Gメンのパトロールが中心で、広範囲での常時監視ができなかった。課題もあるが、衛星によって早期の発見が可能になり、予防効果も期待できる」と自信を示している。
出典:読売新聞