香川・豊島の産廃問題:歴史、次代に 風化阻止へサイト開設 子供の見学減、住民が危機感
2013/06/15
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国内最大級の産業廃棄物が不法投棄された瀬戸内海の豊島(てしま)(香川県土庄町)の歴史を若い世代に伝えようと、住民らでつくる廃棄物対策豊島住民会議などが、ウェブサイト「豊島・島の学校−豊かな島と海を次の世代へ」を開設した。瀬戸内国際芸術祭の会場として注目を集める一方、産廃処分場の見学は年々減少。「このままでは忘れ去られてしまうのではないか」との危機感から、不法投棄問題を発信している。
豊島には1970年代以降、産廃業者が約90万トンのごみを不法投棄した。77年ごろから住民らが反対運動を展開。弁護士の故中坊公平氏が弁護団長となって国に公害調停を申請し、2000年6月に成立した。現在も産廃の撤去作業が続いている。
00年には県内外の小中学校の子供ら約5000人が島の産廃処分場を見学に訪れ、社会的な関心も高かった。しかし、10年には約1500人に減少。住民会議は03年から毎年、産廃問題を伝える「豊島・島の学校」を開いてきたが、運営に当たる島民の高齢化などを理由に昨年で閉校した。
豊島は10年と今年、瀬戸内国際芸術祭の会場になり、現代アート目当ての観光客が急増している。しかし、産廃問題への関心は広がらず、危機感を抱いた住民会議のメンバーらがNPO法人「瀬戸内オリーブ基金」や弁護団メンバーらと今年1月からサイト開設に向けて準備してきた。
サイトでは、産廃業者が豊島に産廃処分場を計画した1960年代から公害調停の成立、県が進める産廃処理事業まで、産廃問題の経緯を画像とともに紹介。住民のインタビュー動画で島に対するそれぞれの思いも伝えている。
今後は公害調停以降の資料なども掲載していく予定。住民会議の安岐正三事務局長(62)は「産廃問題が終わっていない豊島は生きた環境教育の場だ。多くの人が島に関心を持ち訪れてほしい。子供から研究者まで幅広く活用できるサイトにしたい」と話している。
出典:毎日新聞