家畜の寝床に紙くずを再利用
2010/05/11
環境省
◆伊勢原の畜産農家と市、企業が取り組み
書類などをシュレッダーにかけて細かく裁断した紙ゴミを自治体や企業から引き取り、家畜の飼育に再利用する取り組みが、伊勢原市内の畜産農家で広がりつつある。
不況による住宅建築の減少などから、これまで使われてきたおがくずが値上がりしていることも背景にあるとみられ、おがくずに混ぜて使える紙ゴミを求める農家と、ゴミの減量を図りたい行政や企業の思惑が一致した格好だ。
畜舎では、牛や豚の体を保護し、排せつ物を吸収して掃除をしやすくするため、おがくずや稲ワラを床に敷くのが一般的。だが、燃焼しても二酸化炭素が増えないとされるバイオマス燃料として、おがくずや稲ワラが注目されており、最近、入手が難しくなってきているという。
このため山口や鳥取県などではシュレッダーで裁断した紙ゴミを混ぜて使う取り組みが始まっている。伊勢原市では、酪農家・石田陽一さん(25)の市への働きかけを契機に、昨年12月から取り組みが始まった。
市役所の各フロアに専用の袋を置き、集まった紙ゴミを石田さんが持ち帰る。週2回、ゴミ袋(90リットル)6~7袋分は集まる紙ゴミを回収し、おがくずと混ぜて牛舎内の乳牛(ホルスタイン)45頭の“寝床”に使用しているという。
石田さんは、「有料のおがくずに、無料の紙ゴミを混ぜて使うことで、飼育費用を減らせる」と話す。水分の吸収力が不十分なため、紙ゴミだけでは使えないが、おがくずより雑菌の発生が少ない利点もあるという。
一方、市側も、様々な種類の紙類が混じり、リサイクルできずに焼却処分していた紙ゴミを、コストをかけずに処分できる。
今年3月からは、市内の養豚業者が自動車部品メーカーの事業所と協力して紙ゴミの再利用を開始。市内には酪農家48軒と養豚業者5軒があるが、さらに数軒の酪農家が再利用を検討しているという。
市農政課は「市内の小学校や他の企業にも呼びかけ、再利用の輪を広げたい」としている。
出典:読売新聞