酒瓶再使用:大手居酒屋が仕組み構築
2010/05/03
環境省
大量生産や大量消費、大量廃棄からの脱却に欠かせないごみの「リデュース(減量)」「資源のリユース(再使用)」「リサイクル(再利用)」。頭文字を取った「3R」の考え方が浸透してきたが、販売システムの変化などもあり、瓶の再使用は減少傾向にある。
こうした中、飲食店チェーンが酒造会社などと協力して酒瓶の再使用の仕組みを作り、注目を集めている。
全国で居酒屋を展開するワタミグループ(東京)は昨年10月から、環境省、日本酒造組合中央会の事業として、プライベートブランドの日本酒3種(300ミリリットル)で再使用瓶を導入した。関東の1都4県379店舗での取り扱い分が対象で、今年度も独自に継続している。
破損した場合などを除き、現在では約9割を回収、洗浄して再使用している。瓶を5回使うと、1回で廃棄するより二酸化炭素排出量を1本当たり約150~180グラム、年間約52トン(年間34万本の販売想定)削減できるという。
環境事業を担当する山崎祐美さんは「商品、サービスといった『動脈』の部分では各企業、店舗はライバル関係にある。しかし、資源の再使用、再利用という『静脈』では環境負荷を減らすために協力できる」と話す。
環境省リサイクル推進室によると、日本ではビールや日本酒の1升瓶、宅配の牛乳などで再使用の仕組みが構築されていた。だが消費者が量販店で購入するケースが増え、酒屋などを通じた回収システムが崩れつつある。
また、ペットボトルなど軽い容器が増え、飲料・食品容器のうち再使用された瓶は5%程度にとどまる。ビールや発泡酒も95年以降アルミ缶が瓶を上回り、瓶は減少が続く。
再使用は空容器の輸送や洗浄でエネルギーを消費するため、再利用より環境負荷が小さいとは限らない。環境省の分析によると、再使用のペットボトルを店頭で販売・回収した場合は回収率が低く、繊維などに転換する再利用よりエネルギー消費量が多かった。
一方、宅配システムで販売・回収し、販売地域近くの工場で空きボトルに商品を再び入れて輸送距離を短縮すれば、再使用の方が環境負荷が小さい。
環境省は今年度、容器包装リサイクル法の対象外だった業務用飲料容器に関する再使用検討会を設置する方針だ。担当者は「リユースとリサイクルをうまくすみ分け、日本全体で負荷を抑える仕組みづくりを目指す」としている。
◇課題は洗浄・輸送経費 丸底瓶では1回きりと単価同じ
「この瓶ならリユースできる」。ワタミグループの再使用瓶導入のきっかけは、山崎さんが聞いた廃棄物回収業者の一言だった。
それまでも300ミリリットル入りの日本酒の瓶は、業者が破砕して「カレット」と呼ばれるガラス片に加工。新たな瓶の原料や道路の舗装などに使われ、資源を無駄にしていなかった。だが、山崎さんは「使えるものを破砕するのはもったいない。環境負荷を減らし、関係者に利益をもたらす仕組みができる」と考えた。
最大の課題は酒造会社の参加の可否だった。山崎さんは約3年前から酒造会社「文楽」(埼玉県上尾市)に協力を打診した。同社は、底の四角い瓶は洗浄が難しく衛生面で不安に感じたが、細菌検査で問題ないことを確認。「山崎さんの熱意に動かされ」(社長室)、参加を決断した。
再利用では毎回新しい瓶を、再使用の場合は洗瓶業者から洗浄した瓶を購入する。「アート瓶」と呼ばれる底の四角い瓶はもともと一般的な丸底の瓶より単価が高いため、洗浄経費を考慮しても再使用の方が割安だ。だが丸底瓶では、再使用瓶も、1回しか使わない「ワンウエー瓶」も単価はほぼ同じだった。
再使用瓶を使い続けるには、環境負荷を抑えるだけでなく経費削減につなげる必要がある。昨年度は環境省などの補助金を輸送用の容器レンタル料などに充てた。当面はコスト減になる見込みだが、「1~2年継続し、長期的にコスト削減になるかを見極める必要がある」としている。
出典:毎日新聞社