能代産廃跡地 再び稼働? 秋田の業者が売却模索
2009/06/22
ニュース
廃油入りドラム缶が不法に埋められ、周辺に有害物質に汚染された地下水が染み出したことがある秋田県能代市浅内の産業廃棄物処分場跡地を、秋田市の業者が首都圏などの企業に売却、再稼働させる動きを見せていることが21日、分かった。社会問題化した処分場だけに、住民は怒りをあらわにしている。
処分場は1980年、民間の能代産業廃棄物処理センターが開設。98年に倒産するまで、約18万平方メートルの敷地に約101万トンの産廃が埋められた。秋田県が倒産後に調査したところ、廃油入りのドラム缶1952本が不法に埋められているのが見つかった。
この土地や事業所などの建物は現在、センターの破産管財人が所有しているが、秋田市の産廃会社「秋田環境」が2007年11月、担保権を持つリース会社(東京)から所有権移転請求権の仮登記を譲り受けた。破産管財人に本登記をするよう求めて秋田地裁で係争中で、本登記されれば所有権は同社に移る。
秋田環境は、跡地売却に乗り出している。
関東に本社のある産廃会社の役員によると、秋田環境や首都圏の仲介業者から昨年から今年にかけて、跡地を25億~30億円で売却すると持ち掛けられた。「土地を整備した県も再開に協力する」と説明されたという。
この役員は今年、秋田環境の社長らとともに現地を視察。ただ、処分場再開の見通しについて十分な説明がなかったため、話は立ち消えになったという。
県には07年以降、同じように視察した業者などから数件の問い合わせが寄せられている。
全国産業廃棄物連合会(東京)によると、首都圏では処分場の設置が難しいため、地方への処分場設置を期待する業者が多い。視察した役員は「既に完成していて許可が下り、県が協力してくれるなら安い話だ」と話す。
こうした動きに、能代市の住民団体「能代の産廃を考える会」の原田悦子事務局長は「県には許可してほしくない。本当に処分場をやるのであれば、今以上に反対の姿勢を表していく」と危機感を募らす。県も神経をとがらせ、「住民感情を考えると、処分場の許可を出すのは難しい」(環境整備課)と話す。
秋田環境は「法を順守して処分場を再開しようとしているだけだ。ほかの業者に売るか、自分たちでやるかはまだ分からない。住民には最後の1人まで納得してもらえるよう、誠心誠意説明したい」と、再稼働を進める姿勢を変えていない。
[能代産廃問題] 能代産業廃棄物処理センターから有害物質に汚染された地下水が周辺の沢に染み出し、1987年から88年に問題化した。倒産後、秋田県は汚水回収・処理などの措置命令を出したが、センターの元社長は従わず、県が環境保全活動の代執行を99年に開始。これまでに県や国は約44億円の公費を投入した。措置命令に従わなかったとして、元社長は昨年12月、廃棄物処理法違反の疑いで書類送検された。
出典:河北新報社