日本最大級の産業廃棄物処理業者・リサイクル業者検索サイトです。

0120-33-8508

受付時間:10:00~18:00 (土日祝日除く)

エコノハサーチ

スマホ版メニュー

産業廃棄物:安定型最終処分場はいま/下 存続か廃止か、国と自治体ねじれ

2008/11/25

環境省

◇「規制強化で対処」「検査徹底は無理」

 各地で汚染が問題になっている「安定型最終処分場」だが、廃棄物を持ち込む業者はコストが安い「安定型」での処分制度の存続を求め、環境省も存続を目指している。一方、汚染に悩む周辺住民は制度廃止を求め、処分場業者を監督する自治体も「本当は廃止してほしい」と漏らす。

◆安さが魅力

 産廃の最終処分場には安定型のほか、地下水汚染の恐れがある産廃を対象とする「管理型最終処分場」がある。管理型処分場では、穴の周囲にゴムやビニールのシートを張り、水がしみ出すのを防ぐ。穴の中の水は排水管で集め、専用の設備で浄化して放流する。設備費がかさむ分、利用料も高い。産廃1トンを処分してもらうのに2万円以上かかる。

 一方、安定型処分場は素掘りで、シートなどは張らない。必要な設備は、産廃からしみ出す水を検査するため地下に向けて通したパイプぐらい。処分料は1トン5000円程度で済み、管理型の約4分の1。がれきなどを大量に出す解体業者にはありがたい存在だ。

 京都市西京区で、バス営業所の解体工事に立ち会った。解体会社「久五郎」(同市伏見区)の作業員がパワーショベルで木造の建物を壊す。マスクを着けた作業員が、がれきや瓦などの「安定5品目」と、それ以外の木くずや鉄くずなどに分ける。礒谷真也工事部長は「壊すよりも分別に手間がかかる」と語る。

 同社は年間約1万トンの解体ごみを滋賀県の安定型処分場に運ぶ。数年前に手がけた大型商業施設の解体では、約3万7000トンのがれきが出た。西田彰邦社長は「安定型処分場は不可欠だ。廃止されたら年間の処分費用が数億円はね上がる」という。

 全国の安定型処分場に埋められる産廃は、推計で年約700万トン。すべて管理型に埋めると、単純計算でも費用が1000億円以上増える。全国約1万6000社の産廃処理業者が加入する「全国産業廃棄物連合会」(事務局・東京都)も、産廃を持ち込む顧客の意向を受けて安定型処分場の存続を求める。

◆「不法投棄が増える」

 こうした要望に対して環境省産業廃棄物課は「安価な処分の道を閉じれば、不法投棄が増加する恐れもある」として、安定型処分場の廃止は考えていないと説明する。

 だが今年、環境汚染の恐れを重視して安定型処分場の建設差し止めを認める最高裁決定が2件続いた。環境省が安定型処分場に義務づけている産廃の内容物の事前検査(展開検査)についても、最高裁決定を含め多くの司法判断が実効性を否定。処分場に有害物質が混入する危険性を認めた。

 それでも環境省は「最高裁はすべての安定型処分場を否定してはいない」と主張する。「展開検査をしっかりやっている処分場もあり、問題は徹底されないこと。都道府県が業者に実施させることが必要」と、規制強化で対処する意向を示唆した。

 一方、最高裁決定への対応として環境省は今月25日、安定型処分場についての検討会を発足させる。有識者5人と都道府県の担当者1人、全国産業廃棄物連合会から1人の計7人が委員。省令で定める技術基準の強化・徹底や、有害物質が漏れ出たとしても水源への影響が避けられる立地規制など、「存続」を前提に議論してもらう。非公開で3回ほど会合を開き、今年度中に方向を定めたいという。

◆「責任取るのは現場」

 同じ行政でも、現場で処分場の規制を担う自治体の意見は異なる。国の方針に表立って逆らうのは難しいが、不安を隠さない。

 自治体は、汚染が生じれば、住民に直接、責任を追及される。しかも汚染対策には費用がかさむ。滋賀県栗東(りっとう)市の汚染では約50億円、宮城県村田町では約30億円に上る見通しだ。処分業者が倒産して対応できない場合、費用はたいてい、自治体の負担になる。

 全国知事会は今年7月、「(安定型処分場)周辺の水道水源への影響に配慮し、設置の許可基準や規制を強化すべきだ」と環境省に要望した。表向きは廃止までは求めていない。

 だが、西日本のある県職員は「展開検査で有害廃棄物の混入を防げないことなど分かっている」という。「存続する限り汚染は続く。すぐにでも廃止してほしい」。別の県の職員は「担当者が少ないため、県内すべての処分場に年1回立ち入るのも難しい。どうやって展開検査を徹底させるのか」と話し、環境省の徹底方針には現実味がないと指摘する。さらに「安定型処分場を許可しても地元自治体にメリットは少なく、責任だけ負わされる。許可は心情的に苦痛だ。できればなくしてほしい」と打ち明けた。

 廃止を求める声は市民団体などにも強い。「廃棄物処分場問題全国ネットワーク」は今年8月、環境省に廃止を求めた。日本弁護士連合会も昨年9月、廃止を求める意見書を環境省に提出した。

 「安定」といいながら安全が保証されない安定型処分場。司法判断もこれを認める。低コストを優先してきた現状の処分制度は曲がり角にさしかかっている。

出典:毎日新聞


「産業廃棄物 処理業者検索サイト【エコノハ】新着ニュース」

一覧へ戻る