熱帯林や草原を農地に変え、穀物を植えてバイオ燃料に
2008/11/17
ニュース
熱帯林や草原を農地に変え、穀物を植えてバイオ燃料に。その過程で放出される二酸化炭素(CO2)は、得られたバイオ燃料がもたらすCO2削減効果の十七―四百二十倍にもなる。米ミネソタ大のデイビッド・ティルマン教授は、この膨大な「炭素負債」をフィールドで実証した。
▼米ブッシュ政権が農産物の価格政策として推進した穀物からのバイオ燃料製造は、環境政策としては全く逆効果だったといえる。穀物ではなく、ワラのような廃棄物や、耕作放棄地に自然に生えてくる多年草からバイオ燃料をつくれば、炭素負債はなし。CO2を大幅に減らせるという。
▼ティルマン教授は、十二月に国際生物学賞を受賞する。生物学者だった昭和天皇の在位六十年を記念して設けられた同賞は、今年で二十四回目。たくさんの種類の生き物が共存する生物の多様性が、生物社会を安定させることを、実験と理論の両面で明らかにした教授の業績が評価された。
▼ミネソタにある二千二百ヘクタールの生態系科学保護区「シダークリーク」で、二十年以上積み上げられてきた幾多の実験。それらが多様性の意味論や効果的な温暖化対策の提言となって結実している。生態系保全や温暖化対策をあざ笑う机上の空論がもてはやされる今の日本、実態からの逃避と知的衰弱はかなり深刻だ。
出典:日本経済新聞